豊田@立教大学社会学部です うなぎが食べたい今日このごろ,立教大学は試験期間です. 朝から今日は試験監督でした.山手線の事故のため混乱してたいへんでした. Takuro Tomita <894b5091 (at) mn.waseda.ac.jp> さんは書きました: >こんにちは,富田拓郎@早大大学院と申します. >先日,ある人から >「心理学的な質問紙は作成の際に,斜交解よりも > 直交解を使った方が,好ましい. > 相関分析や重回帰を行う際に,斜交解だと望ましくない」 >という発言を聞きました. > >本当でしょうか??また,この理由はなぜなのでしょうか? この問題に関しては,私自身は 「探索的因子分析は,斜交解があれば直交解はもういらない」 という考えをもっています. まず因子間の相関が高い場合ですが, たとえば,数学のテストを探索的因子分析して,「応用問題」「計算問題」とい う2つの因子を抽出し,斜交解の因子観相関は0.6であるとします.この場合,物 理の期末の成績を2つの因子から回帰予測をするとき直交解の因子を予測変数に して回帰分析しても意味がありません.応用の能力と計算の能力は常識的に高い 相関があるのだから,直交化した段階で因子の実質科学的意味が失われるからで す.「多重供線が生じるから」というのは本末転倒の議論であり,回帰予測をす るのであれば,直交解という数理モデルにたよるのではなく,心理学的モデルによ って互いに相関の低い原因変数を用意するべきです. つぎに心理学的な考察の結果として相関の低い因子が用意されている場合ですが 斜交解を求めると因子間相関は当然ゼロに近くなります.ゼロと制約しないにゼロ に近くなったという事実は,構成概念妥当性を補強する重要な論拠になります.逆 に,逆説的に聞こえますが直交解では因子間の相関が直交しているという知見は導 けないのです.このように心理学的に因子間相関が低い場合も斜交解のほうが役に 立ちます. ちなみに鈴木さんが研究なさっているプリズムの因子は,数理的に無理矢理直交化 しなくても因子間相関は低いものだったと記憶しています. バリマックス解から得られる知見はすべてプロマックス解から得られます.プロマ ックス解から得られる知見は,必ずしもバリマックス解からは得られません. "SUZUKI, Tokuhisa" <stok (at) nikkei-r.co.jp> さんは書きました: >鈴木@日経リサーチです >ただ、この枠組みは直交か斜交かという以前に、過去のfprにおけ >る議論の1つとしては、因子を説明変数にするのは好ましくないと >いう見解が、豊田さんから示されました。理由の1つは因子得点を >回帰推定した時の回帰効果であり、解決の1つはSEMの枠組みに移 >行することでした。 以前,鈴木さんと企業評価システムプリズムの分析をしたことがあるのですが,上 記の信念は鈴木さんとプリズムの分析をしているうちに更に深まりました,理由は 以前の記事に書いた部分は,繰り返しませんが, 因子スコアの回帰は (1).因子空間を推定するさいの標本誤差による不安定さ (2).因子負荷行列を決める際の回転の不定性による不安定さ (3).因子スコアの不定性による不安定さ (4).回帰係数推定の際の不安定さ という4つが累積的に悪影響を及ぼします.回帰効果もそうですが,誤差の累積が 多すぎます.プリズムで行った改良は以下の通りです. まず実質科学的に相関の低い原因系を構成し,因子負荷行列に制約をいれて (2)に関する不安定さをなくす.次に因子スコアを推定せずに(3)による不安 定さをなくす.SEMによって因子負荷と回帰係数を同時に推定することによって(1) と(4)の誤差の累積を防ぐ.というものです. kazmori (at) gipwc.shinshu-u.ac.jp (MORI Kazuo) さんは書きました: >守@信州大学です。 > 斜交解は直交解をも含むより柔軟な解ですから、データへのあてはまりは優れてい >るはずです。 直交解と斜交解はデータへのあてはまりは同じです.1つの因子空間が定まった段階で データへの当てはまりが決まり,直交解と斜交解は同じ因子空間のどこに軸を引くかの 問題ですから,データへの当てはまりは常に正確に一緒です. Takuro Tomita <894b5091 (at) mn.waseda.ac.jp> さんは書きました: >私は現在の質問紙があまりにも主因子法バリマックス回転 >ばかり用いているので,斜交解をどうして用いないのだろうか >と常々考えていたのですが・・・ 80年代中ぐらいまで (1)パソコンで斜交解をもとめると何十分もかかったこと (2)プロマックス解のような,分析者の仮説に近い解の得られる回転解が主流では なかった ことの2つが理由だと思います. (私自身の経験ではプロマックス解に出会うまでは,斜交解よりバリマックス解の方が 思った通りの因子負荷が得られて,便利でいいと思っていました.) その時代のなごりが,まだ残っているのだと思いますが,少なくとも「教育心理学研究 」では状況が変わってきています.探索的因子分析を主として利用した論文は昨年度に 15件発表されています.その中でプロマックス解を利用した斜交解は平・川本・慎・ 中村(1995),上淵(1995),笠井・村松・保坂・三浦(1995),落合・佐藤・岡本・国本 (1995),落合・佐藤(1996a,b)の6つの論文で使用されています.本年度に生じた変化 の傾向は今後更に加速していくのではないでしょうか. 追伸:岡本さんの数理モデルによる明快な説明は,いつもとても参考になります. 有り難うございます. 質問があります. 学会論文審査のためには,客観的な統計的部分に関してはガイドラインを作るべきで ある(審査の当たり外れも少なくなる)という考え方があります.しかし上記のよう な私の主張には,いろいろと疑問・異論・反論が出るはずで,統計的な判断にも専門 家の間に食い違いがあります.皆さんは,それでもガイドラインは必要だと思われま すか? ---------------------------------------------------------------------- Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-3985-2323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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