長谷川@岡山です。 豊田さん初め、ラウンドテーブルディスカッション(どこにもラウンドテーブルはなかっ た??)の企画、司会、指定討論の皆様、どうもありがとうございました。 今回の話題は、私のような素人にもたいへんわかりやすく、特に、実験的研究の問題点と 因果モデルの構成にあたっての留意点のところが参考になりました。 ・実験研究では、現実には、統制しない要因については、ランダマイゼーションをきちっ と行っているわけではなく、実験者が都合のよいように固定している場合が殆どではない かと思います。物体の落下実験では、無味無臭の固体を用いるのが普通ですから、お話に もあった「くさやのひもの」がもたらすニオイの効果については何も言えません。いや、 もしかしたら、真空空間にニオイの分子が拡散することが落下速度に何らかの影響を及ぼ すかもしれないと思いました。 ・「コンテクストフリーの因果モデルは存在しない」、「因果モデルは要請の範囲で構成 される」というお考えは、そのとおりだと思います。翌日の佐藤方哉先生の講演でも言及 されたのですが、行動分析学の科学観とちょっと似ているなあと、感じました。科学とい うと「自然のなかに厳然と存在する秩序を人間が何とかして見つけ出す作業」であると思 われがちですが、「科学とは自然を人間が秩序づける作業である」というのが行動分析学 の考えのようです(佐藤方哉、1976による)。この場合、「自然を秩序づける作業」は、 何らかの要請に基づいて行われるものであると思います。確か佐藤先生の講演でも言及さ れていましたが、科学というのは、例えば落下の法則を表す数式そのものではなくて、数 式に基づいて「この物体を落とすと、何秒後にはこの位置にくる」ということを予測(も しくは制御)する行動であるということになります(うーむ、突っ込まれてもちょっと反 論する余裕はないです)。<--やっぱり久保田新さんにも出てもらいたかった。 ・「モデル構成が先で、データ収集は後」これも、ぜひ多くの学生に伝えたい内容です。 学生に限らず、無目的にデータをとって、あとからモデルを作ろうという傾向があまりに も多すぎるような気がします。 ・時間があれば質問してみたかったこととしては、1つは「納得・了解」の意味。無人島で 生活しているロビンソンクルーソが自分の行動を分析する場合は、どう考えるのかなあ。 それと、配布資料の21〜22ページの弁別妥当性の件ですが、MMPIの虚構性尺度のようなも のはどうお考えなのでしょうか。また、お時間のある時にお教えください。 ---------- 長谷川芳典(岡山大学文学部心理学教室) 署名簡易版 http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/psycho/member/hase/h0u.html
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