[fpr 826] グラフィカル多変量解析

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

わたしもSspssに紹介した文章を載せます。少し修正しました。
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狩野裕『AMOS,EQS,LISRELによるグラフィカル多変量解析−目で見る共分
散構造分析』現代数学社 1997.10 実際は11月 2600円 235頁

共分散構造分析の第1人者である狩野氏の共分散構造分析の入
門書。しかも、AMOS、EQS、LISRELの入門書にもなっている。BASIC
数学連載を元にしているが、連載を読んだ人も必読。初心者はもちろん
のこと、中級、上級者にも得るところがあるだろう。

目次
1 回帰分析
2 AMOS,EQS,LISREL初体験:パス解析と多重指標分析
3 因子分析
4 共分散構造分析の基礎
4.1 変数いろいろ
4.2 方程式と分散・共分散
4.3 共分散構造とは
4.4 識別性について
4.5 モデルの入力形式と推定値の出力形式
4.6 パラメータの推定方法とその考え方
4.7 適合度の吟味
4.8 統計的推測の注意点
4.8.1 5件法や7件法のデータ(順序カテゴリカルデータ)をど
う分析するか
4.8.2 正規性の検討と楕円分布
4.8.3 どの推定法を選ぶか
5 モデルの修正
6 多母集団の同時分析と平均構造のある分析 

わかりやすい例を使いながら、徐々に複雑なほうへと進んでいくのが1
章から3章。ここでは具体的な例を使いながらモデルを作っていく。そ
して節のあとにはAMOS、EQS、LISRELでその節でおこなった分析の具体的
処理法が示される。マニュアルとしてもいい構成をしている。

上の目次では4章をくわしくりすとしているが、具体的分析の理由、統
計または数学的にはっきりいえること言えないこと、具体的対処、数値
の見方、そして各ソフトの操作の仕方と出力がある。

5章では実際のユーザが悩むモデルの修正について、端的に書いてある。
もちろん具体例つきである。

6章では最近議論が湧いている、多母集団の分析である。つまり、男女
で構造が違うのか平均が違うのかの問題である。EQSでは少し扱いにくい
が、これを読めば出来るようになります。

もちろん、最近の展開もフォローしてある。

問題設定、何を考える必要があるか、何がいえて何がいえないか、実際
の対応という議論の進め方から、読後すっきり感がある。
本来なら議論展開がややこしい部分も簡潔に説明する。

実際のソフトの使い方は画面がそのままでているのでわかりやすくなっ
ている。

私の理想とする統計書のタイプになってます。

気づいた点。
(0)LISREL の読みがリズレルに確定した。

(1)各ソフトのバージョンをp228でかいているが、本文の註にEQS5.5以下
の場合というのがあるのでEQSは5.6を使用しているようだ。

(2)P-値よりもp値として欲しかった。

(3)プログラムリストや出力を「表」としていたが、「リスト」などとわ
けたほうが良かったのではないか。またはGnanadesikan ように「表示」
(Exhibit 日本語の訳本がでているがチェックが面倒)という言い方で図表
とも統一する。
(註 Gnanadesikan Methods for statistcal data analysis of 
multivariate observation.Wiley. 最近(1997)2版がでている。しかし,
引用文献を見る限り最近のフォローはほとんどない。SASのプログラム
での処理についての付録がついた。1977年当時は画期的な本といえた。)

(4)p220 下から1行目から
「もし、標本数がもう少し大きければモデル4が受容されるかどうかは
微妙でしょう。男女間で因子の分散・共分散が変化しないということは
十分考えられます。」
ここは説明がとんでいるでしょう。「このデータの分散・共分散を同じ
で人数だけ増やしたデータを分析したらモデル4は支持されなかった。
このように...。」ではないかな。途中で、人数を増やした処理をしてい
たら言わないでもいいかな。まだ斜め読みなのでそのあたりはチェック
がきちんとできていない。

(註:これについては狩野さんに直接メールして返事をいただきました
狩野さんwrote in personal e-mail
>不適切な表現でした.多母集団の
>分析では,いわゆる「スケール効果(一般的な用語ではないかもしれない)
>」がはたらき,因子の共分散構造が一致しないことの方が多いのです(参 
>pp.191-192).このことを常識として,男女で分けるときは(例外的に)
>スケール効果が無く,一致するかもしれないよ,という意味なのです.
>この「常識」を既知としたのが,文脈を分かり難くしてしまっています.
)

(5)誤植は p11までで3カ所みつけたが、それによってミスリーディング
が起こるようなところではないので、さがしてみて下さい。

数理的な説明は別の本ということなのでこれも期待する。

それから、日本でもこの手のソフトと連動した統計書が増えることを期
待する。
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と豊田さんの評と一致するところ一致しないところがあります。

とくにソフトの使い方のと関係では,私の考えでは,テキストですから,
2,3年で改訂することを前提書いて欲しい。あくまでユーザの立場です
。

堀 啓造(香川大学経済学部)
e-mail    hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp
home page http://fourier.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/

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