南風原@東大教育心理です。 Y.Hasegawa/長谷川芳典 さんが以下のように書いています: >センター試験関連ということで話題をもう1つ。 >別のMLではご案内したのですが、英語の問題に心理学の実験の紹介文のようなものが ありました。 >これについての感想を、私的なWeb日記に記しておりますので、よろしかったら御覧くだ さい。 > >http://www4.justnet.ne.jp/~hasep/98/01/18.htm >http://www4.justnet.ne.jp/~hasep/98/01/19.htm 日記,拝見しました。(引用していいですよね。) > さて、本題に入るが、英語の設問自体は、記述を正しく読みとっているかどうか >を問うものであるから、英語力を調べる問題としてはそれなりの妥当性があると思 >う。ただ、心理学の立場から見ると、問題文でのデータの扱い方、あるいは根本的 >な実験計画のあり方には、疑問を感じざるを得ない。 > > まずデータについては、群別の正答数の見かけの大きさではなく正答比率を、統 >計的検定にかけたうえで比較すべきものであろう。イメージ群のほうが絵提示群よ >り正答が2倍多いと言ったところで、正答が1個対2個の場合もあれば5個対10個の場 >合もある。単なる正答の絶対数の比をとっても意味をなさない。比較するならば、 >あくまで正答比率(「目覚まし時計問題』であれば、0/35、2/35、3/35の比較)に >有意差があるかないかを検討すべきである。この点で、心理学としては少々妥当性 >を欠く問題と言わざるを得ない。 まず,テスト問題としては,正答数がどうであるか,正答率がどうであるか,を 表を見て答えるわけですから,特に欠陥はないですよね。 あとは,このような記述的結果をどう評価するか,という問題です。その評価の 基準として,特定の(必ずしも実際のデータ収集の仕方を適切に反映しない)確 率モデルに基づく「統計的有意性」という基準を持ち込むのが心理学の通常のや り方ではありますが,それが唯一の方法であるかのように問題文に書くよりは, この問題のように,得られた結果を記述的なレベルで吟味するという形のほうが 無難ではないかと思います。 --- 南風原朝和(東京大学大学院教育学研究科)
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