[fpr 864] DNC Exam

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

Y.Hasegawa/長谷川芳典 さんが以下のように書いています:

>センター試験関連ということで話題をもう1つ。
>別のMLではご案内したのですが、英語の問題に心理学の実験の紹介文のようなものが
ありました。
>これについての感想を、私的なWeb日記に記しておりますので、よろしかったら御覧くだ
さい。
>
>http://www4.justnet.ne.jp/~hasep/98/01/18.htm
>http://www4.justnet.ne.jp/~hasep/98/01/19.htm

日記,拝見しました。(引用していいですよね。)

> さて、本題に入るが、英語の設問自体は、記述を正しく読みとっているかどうか
>を問うものであるから、英語力を調べる問題としてはそれなりの妥当性があると思
>う。ただ、心理学の立場から見ると、問題文でのデータの扱い方、あるいは根本的
>な実験計画のあり方には、疑問を感じざるを得ない。
>
> まずデータについては、群別の正答数の見かけの大きさではなく正答比率を、統
>計的検定にかけたうえで比較すべきものであろう。イメージ群のほうが絵提示群よ
>り正答が2倍多いと言ったところで、正答が1個対2個の場合もあれば5個対10個の場
>合もある。単なる正答の絶対数の比をとっても意味をなさない。比較するならば、
>あくまで正答比率(「目覚まし時計問題』であれば、0/35、2/35、3/35の比較)に
>有意差があるかないかを検討すべきである。この点で、心理学としては少々妥当性
>を欠く問題と言わざるを得ない。 

まず,テスト問題としては,正答数がどうであるか,正答率がどうであるか,を
表を見て答えるわけですから,特に欠陥はないですよね。

あとは,このような記述的結果をどう評価するか,という問題です。その評価の
基準として,特定の(必ずしも実際のデータ収集の仕方を適切に反映しない)確
率モデルに基づく「統計的有意性」という基準を持ち込むのが心理学の通常のや
り方ではありますが,それが唯一の方法であるかのように問題文に書くよりは,
この問題のように,得られた結果を記述的なレベルで吟味するという形のほうが
無難ではないかと思います。

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南風原朝和(東京大学大学院教育学研究科)

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