南風原@東大教育心理です。 鎌田さんが以下のように書いています: >地理のテストはあくまでも地理の学力を測定するテストであり、その得点が数学のテ >ストが測定する学力とは関係ないはずです。もちろん相関があることは確かですが、 >相関が高いことを理由に、「数学や英語で高得点の人がたくさん地理のテストを受け >たので、地理の平均点が高くなった」とは結論できないはずです。 また,豊田さんは以下のように書いています: >「関係ない」という立場を取るか「係留(アンカー)させる」という立場をとるかは, >その入試が実現しようとしている理念の問題ですから.各大学の各募集単位の入試委 >員会ごとに判断すべき問題であり,「いけない」とか「できない」という問題ではな >いことを,まず踏まえる必要があります. 個々の得点調整の方法がどういう理念を実現するものか,どういう理念と整合的か という検討が大事ですよね。言い換えれば,英・数・国に加えて理科や地歴・公民 を課すこと,また理科や地歴・公民に関してその中の科目を自由に選択させること は,どういう理念に基づいているのか,その理念からすれば得点の取り扱いはどう すべきなのかということです。 これは確かに各大学が主体的に判断すれば良い問題ですが,公の議論によって,あ る程度は共通認識が得られる問題ではないかとも思います。その上で,最終的には 各大学が決めれば良いでしょう。 入試センターは,豊田さんの言うように「本来,素材を提供する役目」を担ってい ると思いますので,「地理Bを選んだ受験生が特別学力が高い人たちだったかどう かなどを見極め」るというような困難な(不可能な?)課題を抱え込まないで,良 質の試験をし,その結果を利用しやすい形で提供すれば良いのではないでしょうか。 たとえば,従来の素点に加え,科目ごとの標準得点など,ある程度の数の大学が希 望する情報を提供したら良いでしょう。もちろん,各大学が素点を使うのか,標準 得点を使うのか,それとも「15点差よりは近づけない」というような独特の方式 を使うのかは,募集要項にあらかじめ明示しておく必要があります。また,受験生 自身にも選抜に使われる自分の得点が分かるようにしておくべきですね。 --- 南風原朝和(東京大学大学院教育学研究科)
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。