佐藤達哉@福島大学行政社会学部です. 入試得点と選抜に関する議論は大事だと思います.★入試というのは大学や高校の数 だけ毎年やられているのに,その基本的なことがどれだけ分かっているのか疑問です .★私自身,教育心理学の中の選抜やテスト理論に詳しい方ではありませんが,勤め てからの入試判定関係の会議には本当に唖然とさせられました.★詳しいことは書け ませんが,「選抜するとはどういうことか」「点数が意味することは何か」というこ とについての知識がほとんど無い人たちが入試委員と称して日常的感覚に基づいて「 得点調整をするかどうか」を決定しているのが現場の実情のような気がします.★ま ず専門分野で大いに議論していただいて,それが様々な実務の場にいくようにしてほ しいと思います. 鎌田さんが >また、「20点差が出れば得点調整」の根拠についても知りたいです。 と書いておられますが,現場が扱う問題はまさにこういう素朴な形で現れるものであ り,唯一の正答はなくても,どう考えればこうなる,みたいな筋道をいくつか呈示し てもらえるとよいのではないかと思います. 話は変わりますが,日本史について守さんが >、「日本史B」はほとんど歯が立たず「いったいこんなことを憶えてどうするの?」 >とあきれてました。 とおっしゃってます.★私は最近,心理学史なるものに手を染めたのですが,そうい うことやってると年号を憶えるなんてのは本当に基礎の基礎だということを痛感しま す.様々な出来事がある中で,因果や相互影響を紡いでいくときに,唯一頼りになる のが時間的順序だからです(超整理法的?).つまり,後から起きた事件が前に起き た事件に影響しているという因果のパスを消すことができることになるので,認知的 負荷を大きく減らすことができるわけです.★入試の日本史のことを考えると,残念 ながら日本史の専門家になる人がほとんどいないということが問題になるのでしょう .仮に日本史学を専攻するのであれば明らかに役立ちます(私も入試の時の知識が今 になって多少は役立っております).事項の暗記がそれ自体が目的化し,しかも大学 入学後は使わない,ということであれば,日本史のような科目は廃止した方がいいと は思いますが,「暗記が好きな人」が不利になるという(どうでもいい)問題は残る かもしれません. ちなみにさらに悪のりすると,かつて話題になった >> 小牧順彌『データ分析法要説』(ナカニシヤ出版)の4章(pp46--52) で扱われていたネズミのT字路学習のデータに2項分布が使えるかという話題は,岩 原著「教育と心理のための推計学」(1957)17章でも取り上げられており,Walk er & Lev 1953 Statistical Influence を参考にしたように思われます(未確認). 文部省内地研究員 東大文学部心理学研究室 佐藤達哉
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。