豊田@立教大学です kazmori (at) gipwc.shinshu-u.ac.jp (MORI Kazuo) さんは書きました: >守@信州大学です。 > 単なる感想です。 > 試験監督の時間がたまたま「地理歴史」の時間だったので、厚い問題冊子90人分を >ひーひー言いながら運ぶことになりました。監督中は暇だったので、問題を解いてい >ました。話題となっている「日本史B」と「地理B」の問題もやってみました。 > 「地理B」はやっていて面白い、よくできた問題のように思いました。 単なる感想をかきます. 日本史の年号や史実は,私が高校生のときとほとんど変わりません(戦後史は少し変わ りましたが).ところが地理は,国の名前も,輸出入のランキングも,産業構造もすご く変わっていますから,教師も教科書会社も教材研究を常にやりつづけなければならな いのでどうしてもボリュームが少なくなります.教科書を比べれば明らかですが,最初 から要求する知識量が違いすぎます. 理科では,物理の教科書は変わらないけれど,生物は5年ごとくらいにぐんぐん変わり ます.対象が変わらず教材が練り上げられる科目はどうしても難しくなると思います. そういうことを考慮して平均を60点にそろえるのは,難しいでしょうね >、「日本史B」はほとんど歯が立たず「いったいこんなことを憶えてどうするの?」 >とあきれてました。 茶飲み話として聞いて下さい. わたしは高校時代に,数学と歴史が嫌いで嫌いで,意味なんか考えずに1夜付けの連続 で,試験の後には直ぐに忘れ,卒業しました.高校2年の3学期の終業式のあとで,数 学の嫌いな友達と教科書を集めて,それを積み上げて燃した(焚書と呼びました)くら い嫌いで自分を苦しめた数学を憎んでいました.数学と決別した人生にせいせいしてい たので大学に入ったときは頭には何の知識も残っていませんでした. ところが教育評価・測定法の授業に目覚めると,忘れ去って何年もたっているはずなの に,すこし勉強すると不思議なくらいスラスラ思い出しました.若い時代に無理矢理1 度勉強しておいたことが学習を著しく容易にしたのです.しかし高校時代に数学の1夜 付けをしなかったら,教育評価・測定法の授業にもともと興味は持たなかったろうし, 仮に持っても数学の知識がないために主専攻にはならなかったはずです.興味よりも, 数学を1から勉強するコストのほうがはるかに大きいからです. 頭が柔軟な高校時代に,留年をちらつかせて無理矢理教えてくれた数学の先生に,今で は本当に感謝しています.歴史もこの年になるとだんだんと興味が出てきました.しか し1度大量に頭に入れたものは忘れた積もりになっても,必要に迫られたり興味を持つ と本当に大切な構造はすぐに思い出すものです.大人の目から見て必要なことだけを 覚えさせていたのでは,それすら忘れてしまいます. 無理矢理暗記させられた「歎異抄」も今の私の文章のリズムを形成しています.頭が若 い時代の,意志の力による(外発的動機づけによる)1夜付けは,その人の人生をとて も豊かにします.人生の可能性を開きます.でも今は年をとったので私には1夜付けな んかできません.残念ながら意味を考えないと頭に入らない年齢になってしまいまし た.意味を考えないと頭に入らない(内発的)状態は残念な状態ともいえるのです. 当然のことながら,1夜付けだけが重要とはいいません.健全な子供は,ほんの1・2 教科に主力の興味・関心・意欲を注ぎ(これも重要),あとはいやいや1夜付けで切 りぬけて,それで十分人生の糧になります.ほんの1・2教科に主力の興味・関心を注 ぐ状態こそが健全な状態なのだとおもいます. 外発的動機づけによる1夜付け群は直後のポストテストの成績が下がるなどという,実 験を読むこともありますが,指標としてナンセンスです.教育の効果はもっと長い目で 見なくてはいけないのですから. -- ---------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo(St.Paul's)University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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