市川@東大です。 守さん: >数日前に、次回の日本心理学会でのワークショップのテーマさがし >も話題になっていました。統計的な分析法の吟味も心理学の基礎と >として重要ですが、討論も重要な研究技術の一つです。 > >そこで、「討論そのものをワークショップのテーマにしよう」という >提案です。 以下を見ると、討論そのものをワークショップのテーマにするという より、ワークショップで討論をしようというだけのようにおもえたの ですが、どちらなんでしょうか? それとも、討論をしてみて、その 討論そのものをテーマにするのでしょうか? (今回のさんぽ討論はま さにそれですが。) >特にテーマにしなくても、本来、学会では討論がなされるべきものです。 >しかし、現実にはあまり討論が盛り上がることはありません。 >実は、『KR』という試みを始めたのも、議論・討論をもっと活発にしたい >という目論見からでした。 >(このMLにだって、そうした意味があるのですよね。) >ただ、『KR』のほうも、議論は低調です。議論の始まりは批判からですから >あえて批判をしてみるのですが、批判への反論はめったにありません。 >褒めた方からのお礼の反応はあるのですが・・・ そうですよね。守さんの費やしている努力にもかかわらず、なぜKR では討論が活性化しないのかというのは大事な問題ですよね。私も、 堀野・市川論文というのが一度守さん論評されたことがあるので、 その立場からの意見ですが、数行の要約プラス感想めいた論評をされ ただけでは、議論する気になれないのです。要約は、自分たちの書い た abstract のほうを流してほしいくらいですし、研究の本質的な ところを読み取ってもらえたという感じがどうもしません。 ですから、私からの提案としては、KRでは、何もすべての論文に 守さんが論評しなくたっていいではないかと思うのです。守さんが 批判するにしても、賞賛するにしても、印象に残って深く読み込ん だ論文に対してていねいなコメントを書いて、著者もそれに応じる ことが生産的な議論になると思えるようなものにするほうがいいの ではないでしょうか。たとえば、学会の普通の査読くらいのくわし さ(全部で数十行くらい)コメントされれば、私なら絶対に何か応 答します。 >最近、討論がなぜなされないのかについて、だんだんわかってきました。 >討論は真剣勝負のようなものと考えられていて、討論することの意義は認めても、 >負けるとひどい傷を負ったり、死んだりしてしまうと考えられているようなので、 >ほとんどの人はあえて討論を好まないのです。 > >私は数年前から授業でディベートをやらせています。ディベートなら今の学生も >議論ができ、議論を楽しめます。 >そこで、これを学会でもやりたいのです。 > >ディベートは「スポーツとしての討論」で、真剣勝負ではなく、「剣道」のような >ものです。これならば、負けても怪我をしたり死んだりしません。 >剣道では竹刀を使い、防具をつけるように、ディベートでも「死なない」工夫が >なされています。 >(1)あるテーマについて肯定派・否定派は機械的に決めます。 >(だから、どっちが勝っても「テーマの優劣」そのものが決まってしまうわけでは >ありません。) >(2)時間制限があります。(だから、敗者に致命傷を追わせることにもなりません。 >敗者に「時間がなくて負けた」という言い訳の余地も残ります。) >(3)勝ち負けの判定を議論の技術に絞って第三者がします。 >(だから、負けた方も「人格まで否定された」ことにならないし、「学説」すべてが >否定されたことにもなりません。) >それでも、鋭い討論のやりとりを通して、理解が深まり、問題点も明瞭になります。 とくに、(1)と(3)については、私は、少なくとも日本の教育 場面でやるときに、どうも抵抗があって、自分の授業でも採用しな いんです。生徒が自分の意見に愛着をもってがんばってくれるとは、 どうも思えないのです。ちなみに、国語教育の人たちと話したとき も、こういう形式は非常に反発がありました。ディベート甲子園の ようなものを見ていると相当気持ちわるがるひともいます。(自分 の意見と逆の役をやりたいと生徒が言うならいいと思いますが、ラ ンダム割り当てを原則とするというのがどうも。) ただ、私自身、こういう形式を試みた上で言っているわけではあり ませんから、考え方が変わるかもしれませんが。どういう形式でや ると、どういう影響や効果があるかというのは、それこそ討論の心 理学のテーマとして研究していきたいとおもっています。(なのに、 科学研究費がずっと落ちているというのはこのテーマです! 今年 は心理学に出さずに他に出したので通るかも (^^! ) >具体的には、「心理学研究論文にデータ処理の最低レベルを課すべきかどうか」などを >普段の持論とは無関係に賛成反対どちらかの立場に立って論じあったらどうでしょう。 >プログラムにはテーマとディベート参加者だけを載せておいて、当日、くじか何かで >そのテーマについての肯定派と否定派に分かれることになります。 > >肯定派・否定派3人ずつに司会進行役1人の7人必要ですので、賛同者(参加希望者) >が6人以上いれば、具体的企画をします。 私は、とにかくこの形式だとやる気がわかないので、すみませんが パスです。でも、観戦してこれはよいと思えるようなら、再考して みるつもりです。 ****-- 東京大学教育学研究科 市川 伸一 ------**** ****---- ichikawa (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp ----**** ****------ TEL & FAX 03-5802-8651 研究室直通 --****
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