[fpr 901] KRのあり方について

守一雄

守@信州大学です。

 市川さんがKRについて批判的コメントしてくれましたので、
お答えします。
 >市川さん:fpr上でのこのやりとりKRにも載せていいですよね?

At  9:58 PM 98.1.29 +0900, d32771 wrote:
>市川@東大です。
>>ただ、『KR』のほうも、議論は低調です。議論の始まりは批判からですから
>>あえて批判をしてみるのですが、批判への反論はめったにありません。
>
>そうですよね。守さんの費やしている努力にもかかわらず、なぜKR
>では討論が活性化しないのかというのは大事な問題ですよね。私も、
>堀野・市川論文というのが一度守さん論評されたことがあるので、
>その立場からの意見ですが、数行の要約プラス感想めいた論評をされ
>ただけでは、議論する気になれないのです。要約は、自分たちの書い
>た abstract のほうを流してほしいくらいですし、研究の本質的な
>ところを読み取ってもらえたという感じがどうもしません。
>
 この件は学会でお会いしたときにお話ししましたよね。
 いつかこうした形でコメントがいただけたときにお答えをして、KRでも
紹介したいと思っていました。
 私がKRのために割ける時間とエネルギーは限られていますから、「全部
に少しずつコメントする」か「一部に丁寧にコメントするか」のどちらかに
せざるをえません。
 現状は、「全部に少しずつコメントする」方を選んでいます。
その理由は、いくつかありますが「全部にコメントする」ことにこだわりたい
と考えるわけはだいたい以下のようなことです。

(1)「無視」は最大の無礼
 実際には、論評に値しないような論文もたくさんあります。だから、そんな
論文にコメントしている時間は無駄です。空き缶を平気で捨てるようなヤツに
意見しても無駄なのと同じです。
 しかし、私もお節介なオジサン世代になったせいか、無視しているだけでは
結局何も変わらないと考えるようになりました。
 私一人ががんばっても無駄なのかも知れませんが、「無視」しないで「批判」
することをどんな論文にもしたいわけです。
 それに、「ろくでもない論文は無視する」というのは学界の常識で、すでに
実行されています。教心研のほとんどの論文は自分自身でしか引用されません。

(2)議論のきっかけとしてのKR
 「批判」をされれば、された人は反論の「権利」が生じます。反論の「義務」
ではありません。fpr上で、市川さんがKRを批判してくれたからこそ、堂々と
ここにこうした意見が述べられるわけです。
 KRで一部の論文しか批評しなかったら、「無視」された著者は「なぜ無視
したんだ」と文句を言うでしょうか?「無視」された著者には反論する機会さ
えないのです。

>数行の要約プラス感想めいた論評をされ
>ただけでは、議論する気になれないのです。
とのことですが、学会発表の時に、ごく短い発表時間の後にさらに短い質疑の
時間があります。あのとき、「短いまとはずれの質問だから」という理由で、
発表者が質問に答えないということがありますか?
私が発表者なら、どんな質問や批判でも、まったく質問がなく「しーーん」と
しているより格段嬉しく思います。

>学会の普通の査読くらいのくわし
>さ(全部で数十行くらい)コメントされれば、私なら絶対に何か応
>答します。
 時間が許す限り、こうしたこともしたいと考えています。ただ、今のところ
ここまでしようと考えたのは、安藤寿康さんの論文だけでした。
 
(3)編集委員会への不信
 市川さんもご存じのように、私は教育心理学会の編集委員会と闘争中です。
いい論文が「不採択」になっている一方で、コメントに値しないような論文
が「採択」されています。私が、教心研の全論文にコメントすることにして
いるのは、「審査委員の審査結果の審査をしている」つもりだからです。

>要約は、自分たちの書いた abstract のほうを流してほしいくらいです
とのことですが、教心研の abstractはめちゃくちゃです。Martelさんという
英文editorがいるらしく裏表紙にも明記されているのですが、いったい彼は
何をしているのでしょう?
 詳しくは『KR』第2巻第7号をご覧下さい。
http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/kr/kr0207.html#abstract
で読めます。
 正式に編集委員会に改善要望書も出しましたが、受け取りの返事さえもら
っていません。(編集委員会は私からの手紙はいっさい返答しない方針のよ
うです。)
 これも仕方がないので、英文の『KR』の発行を始めました。日本語が読
めない読者にもぜひ読んでもらいたいいい論文もあるので、私が紹介文を英
文で書いたものです。(なお、ここではさすがに全部の論文の紹介をする手
間が惜しいので、いい論文以外は「無視」しています。)


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守 一雄@380-8544信州大学教育学部学校教育講座(これだけで郵便が届きます。)
kazmori (at) gipnc.shinshu-u.ac.jp             電話 026-232-8106 内線454
『DOHC』『KR』発行元      Fax    026-237-6131 直通
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