岡本@金沢大学です。
南風原さんのパラドックス( [fpr 917] Re: 日心 RTD (Scale type))は
尺度水準(scale type)の問題のよい例になっています。
>のように有意差が得られます。「単位時間当たりの遂行課題数」と「1課題当た
>りの所用時間」とに心理学的に異なる意味を付与することができないとしたら,
>この分析結果はどちらも特定の scaling による artifact で,意味がないとい
>うことになるんでしょうね。
分散分析の場合、平均値を求め、これらの平均値からの差が計算されます。
したがって、尺度水準の普通の考え方からすると分析の対象となるデータ値は
間隔尺度以上の水準でなければなりません。課題遂行数と所用時間はお互いに
逆数の関係にありますから、心理学的に同じものを表わしているという解釈
のもとでは、2つの尺度が同時に間隔尺度であることはありません。どちらも、
間隔尺度ではないという可能性もあります。
南風原さんの例(課題数の場合):
被験者 条件1 条件2 条件3
1 1.7 1.9 2.0
2 4.4 4.5 5.7
3 6.6 7.4 10.5
の場合、値を順序尺度の水準と見て、Friedman two-way analysis of variance
で検定すると5%水準で有意に差が認められます。
上の逆数をとった所用時間
被験者 条件1 条件2 条件3
1 0.588 0.526 0.5
2 0.227 0.222 0.175
3 0.152 0.135 0.095
の場合も、同じ結果になります。
パラメトリックの分散分析の場合に、課題数データで有意差が認められなくて、
所用時間で有意差が認められた原因は、主として交互作用の平方和の変化にあります。
課題数の場合は、被験者によって条件間の差の大きさが異なります、それと
比較すると所用時間の場合は、被験者による条件間の差の変化は小さくなって
います。
このため、全平方和に対する交互作用の平方和の比率は
課題数の場合は
3.933/69.16 = 0.057
所用時間の場合は
0.001/0.292 = 0.003
と、所要時間の場合は、課題数の場合に比べて1/20になっています。
岡本安晴
C00279 (at) simail.ne.jp
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