石田@東北大です. C00279 (at) simail.ne.jp 氏は 「[fpr 912] Re: 日心 RTD」において曰く: > 反応時間の分析のときは、逆数変換がよい。なぜなら、時間の逆数は速度 > だから。という考え方があります。 反応時間は,要因の操作によって変化する部分とそれに影響を受けない定数 部分の和だと考えられています.変化する部分をF,定数をCとあらわすと反応 時間はRT=F+Cと表されるわけです(とりあえず誤差はおいときます). この定数部分とは具体的には,刺激が感覚器によって知覚され脳内の(?) 判断が行われる部分に達するまでの時間と,反応に関する判断が行われそれが (例えば)キー押し動作という運動として実行されるまでの時間です. でもってF1とF2の二水準の一要因実験ではそれぞれの反応時間は以下のよう になります. RT_{F1}=F1+C RT_{F2}=F2+C でこれらの差はF1-F2となり,これはこの要因の効果と言ってよいものです. 一方反応時間の逆数を取ったとすると,それらの差は(F2-F1)/(F1+C)(F2+C) となります.これは要因による影響を言えるかどうかは疑問が残ります.一般 に要因による影響(数十msec)よりもこの定数項はかなり大きい(数百msec) ので,この定数項の影響が混入したこの差は見るべき影響を不当に(?)薄め たものとなります. と言うようなわけでこの考え方はあまり賛同できません. 反応時間がこのように影響を受ける項と定数項からなるというのは古くから 指摘されていて,その定数項の影響を取り除くためにNeisserのvisual scanや Egethのvisual search,Sneiderのcost/benefit analysisというものが考案さ れています. -- "This night wounds time" 東北大学 情報科学研究科 人間社会情報科学専攻 認知心理情報学講座 石田 翼 <tbs-i (at) cpsy.is.tohoku.ac.jp>, <GHE04441 (at) niftyserve.or.jp> HomePage: http://www.cpsy.is.tohoku.ac.jp/~tbs-i/ Key fingerprint = 74 59 19 BD 78 6B 82 17 E1 6B 26 35 CE 06 B2 94
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