[fpr 925] 日心RTD (Scale type)

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

岡本さん@金沢大学が以下のように書いています:

>  分散分析を統計の問題としての範囲で考えるのなら、例えば、分散を揃えるため、
>あるいは正規分布の仮定を満たすため、という統計学的な意味から変数変換を
>考えることになるわけで、これは統計学的な意味を問題にしていることになります。
>  速度の心理学的な意味も考えてということなら、速度という尺度の水準も考えて
>分散分析を行う必要があります(参照:[fpr 919] 南風原のパラドックス)。これは
>反応時間を分散分析にかける場合も同じです。心理学的な意味を考えて分析するとき
>にはそれらの尺度水準を無視すると危険だというのが南風原さんのパラドックスの
>意味です。もちろん、この場合の尺度水準は心理学的な意味において考えられるべき
>ものであって、物理的な意味においてではありません。

統計学的な意味,心理学的な意味,物理学的な意味,の区別が鍵のようですね。

とくに間隔尺度に関して,「等間隔」という言葉が上記のどちらの意味かを明確
にせずに使われるケースが多いように感じています。たとえば温度は間隔尺度を
なす変数の代表例としてよく引き合いに出されますが,10度と15度の差と,
40度と45度の差は,加熱による温度変化や熱膨張という物理学的現象を考え
れば同じだけの差ですが,人が感じる暖かさという点からすれば,等間隔かどう
かは分からないわけです。

また,テスト理論で潜在的な尺度を考えることがありますが,その尺度の「等間
隔性」というのも,心理学的な根拠があるのではなく,たとえばロジスティック
関数で項目反応関数を記述するというモデル化の枠内での,統計的な意味での性
質あるいは要請と言えるでしょう。

こう考えると,(これまでも指摘がありましたが)「差と差の比較」である交互
作用の分析や解釈を機械的にやってしまうことの危なさが見えてきますね。

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南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 
〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科
TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807

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