岡本@金沢大学です。
[fpr 976]より:
>ただ、評定値におおざっぱな整数比を与えるということになると、
>結果の尺度値もある程度大ざっぱになってくるのでしょうか?
シミュレーションで調べてみました。
鈴木さん(JJEP, 1956, p.290)の表1のデータを使って評定のカテゴリー数
の影響を見てみます。
表1のデータでは、評定値が1、3、5のものの頻度はすべて7です。
同じもの同士の比較は省き、対角線より下のものだけを数えました。
1/3、1/5はそれぞれ3、5として数えています。
この1,3,5の評定値の頻度がすべて7であるということから、
評定者は各カテゴリーを等頻度で用いようとしたと仮定します。この
反応のバイアスの仮定はpsychophysicsではよく知られているものです。
表1の重視度の値w[i]からw[i]/w[j]を算出して、その分布を見ます。
分布の中ほどで区切って評定値が1と2の場合のデータを作成すると
次のようになります。
A = | 1 1/2 1 1 1/2 1/2 1/2 |
| 2 1 2 1 1 1 1 |
| 1 1/2 1 1/2 1/2 1/2 1/2 |
| 1 1 2 1 1/2 1 1/2 |
| 2 1 2 2 1 1 1 |
| 2 1 2 1 1 1 1 |
| 2 1 2 2 1 1 1 |
上のデータに対して重みベクトルを求めると
w[1] = 0.09179
w[2] = 0.16569
w[3] = 0.08284
w[4] = 0.12684
w[5] = 0.18358
w[6] = 0.16569
w[7] = 0.18358
となります。
元の1,3,5のカテゴリー数3の場合は
w[1] = 0.05158
w[2] = 0.16939
w[3] = 0.03736
w[4] = 0.09691
w[5] = 0.20955
w[6] = 0.19945
w[7] = 0.23576
でした。
カテゴリー数3の場合は、重みは、w[1],w[3]のグループ、
w[4]のグループ、w[2],w[5],w[6],w[7]のグループの3グループ
に分けられるようです。
カテゴリー数2の場合の重みは、w[1],w[3],w[4]のグループと
w[2],w[5],w[6],w[7]のグループの2つのグループに分けられます。
カテゴリー数の影響がかなり強く重みの値に出ているといえそうです。
カテゴリー数を評価項目数に等しく7にしてみます。カテゴリー数が
2の場合と同じ考え方で、7つの評定値、1,2,3,4,5,6,7が
等しい頻度になるように鈴木さんの表1の重視度の値から一対比較の
データを作成すると次のようになります。
A = | 1 1/5 2 1/3 1/6 1/5 1/6 |
| 5 1 6 3 1/2 1 1/3 |
| 1/2 1/6 1 1/5 1/7 1/7 1/7 |
| 3 1/3 5 1 1/4 1/4 1/4 |
| 6 2 7 4 1 1 1 |
| 5 1 7 4 1 1 1/2 |
| 6 3 7 4 1 2 1 |
このときの重みは
w[1] = 0.03689
w[2] = 0.15373
w[3] = 0.02557
w[4] = 0.07449
w[5] = 0.23591
w[6] = 0.19021
w[7] = 0.28322
となります。
カテゴリー数3の場合より値が分離されています。
岡本安晴@金沢大学文学部
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