[fpr 978] AHPにおける評定カテゴリー数について

岡本安晴

岡本@金沢大学です。

  [fpr 976]より:

>ただ、評定値におおざっぱな整数比を与えるということになると、
>結果の尺度値もある程度大ざっぱになってくるのでしょうか?

  シミュレーションで調べてみました。

  鈴木さん(JJEP, 1956, p.290)の表1のデータを使って評定のカテゴリー数
の影響を見てみます。

  表1のデータでは、評定値が1、3、5のものの頻度はすべて7です。
  同じもの同士の比較は省き、対角線より下のものだけを数えました。
  1/3、1/5はそれぞれ3、5として数えています。

  この1,3,5の評定値の頻度がすべて7であるということから、
評定者は各カテゴリーを等頻度で用いようとしたと仮定します。この
反応のバイアスの仮定はpsychophysicsではよく知られているものです。

  表1の重視度の値w[i]からw[i]/w[j]を算出して、その分布を見ます。
  分布の中ほどで区切って評定値が1と2の場合のデータを作成すると
次のようになります。


    A  =  |  1   1/2   1    1  1/2  1/2  1/2  |
          |  2     1   2    1    1    1    1  |
          |  1   1/2   1  1/2  1/2  1/2  1/2  |
          |  1     1   2    1  1/2    1  1/2  |
          |  2     1   2    2    1    1    1  |
          |  2     1   2    1    1    1    1  |
          |  2     1   2    2    1    1    1  |

  上のデータに対して重みベクトルを求めると

              w[1] =   0.09179
              w[2] =   0.16569
              w[3] =   0.08284
              w[4] =   0.12684
              w[5] =   0.18358
              w[6] =   0.16569
              w[7] =   0.18358

となります。

  元の1,3,5のカテゴリー数3の場合は

              w[1] =   0.05158
              w[2] =   0.16939
              w[3] =   0.03736
              w[4] =   0.09691
              w[5] =   0.20955
              w[6] =   0.19945
              w[7] =   0.23576

でした。

  カテゴリー数3の場合は、重みは、w[1],w[3]のグループ、
w[4]のグループ、w[2],w[5],w[6],w[7]のグループの3グループ
に分けられるようです。

  カテゴリー数2の場合の重みは、w[1],w[3],w[4]のグループと
w[2],w[5],w[6],w[7]のグループの2つのグループに分けられます。

  カテゴリー数の影響がかなり強く重みの値に出ているといえそうです。

  カテゴリー数を評価項目数に等しく7にしてみます。カテゴリー数が
2の場合と同じ考え方で、7つの評定値、1,2,3,4,5,6,7が
等しい頻度になるように鈴木さんの表1の重視度の値から一対比較の
データを作成すると次のようになります。

      A = |   1  1/5   2  1/3  1/6  1/5  1/6   |
          |   5    1   6    3  1/2    1  1/3   |
          | 1/2  1/6   1  1/5  1/7  1/7  1/7   |
          |   3  1/3   5    1  1/4  1/4  1/4   |
          |   6    2   7    4    1    1    1   |
          |   5    1   7    4    1    1  1/2   |
          |   6    3   7    4    1    2    1   |

  このときの重みは

                   w[1] =   0.03689
                   w[2] =   0.15373
                   w[3] =   0.02557
                   w[4] =   0.07449
                   w[5] =   0.23591
                   w[6] =   0.19021
                   w[7] =   0.28322

となります。

  カテゴリー数3の場合より値が分離されています。



                                 岡本安晴@金沢大学文学部
                                 c00279 (at) simail.ne.jp


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