豊田@立教大学です Kazuhiro TANJI <tanji (at) sapporo.jwa.go.jp> さんは書きました: >さて、私どもは気象現象(吹雪、路面凍結・・・)による自動車 >運転者の挙動特性について調査研究を行っているところでありま >す。すなわち、気象条件を背景としたドライバーのヒューマンフ >ァクターを分析することによって、道路上の防雪対策の基礎資料 >とするものです。 >この調査に先立ち、基礎的なドライバーの運転特性を把握するこ >とを目的として、冬期道路上のドライバーの反応時間(外部信号 >からブレーキペダルに足を乗せるまでの時間)を様々な被験者・ >状況下で観測したところであります。 >このデータにもとづき、「条件A」「条件B」の被験者の相違を >統計学的手法によって、有意差の検定を行おうとしていますが、 >分布形はどうやら正規分布と言えそうになく、その検定手法に頭 >を悩ませている次第であり、いくつか質問させていただきます。 この質問はfprの「今年の課題」に直接関係する問題ですね. オリジナルの質問に直接答える形式ではなくて,少し議論を広 げるような雑感を書きます. 反応時間の分布が正規分布でない場合とは(小生が出会った範囲 では)正に歪んでいる場合がほとんです.実験中に夕食のおかず のことが頭をかすめてブレーキを踏むのがかなり遅くなった人の データがはいっていることが理由かも知れません.このような場 合は分布の要約統計量としての算術平均が実態を(実質科学的な 意味を)反映しなくなります.分散分析の数理的な正規分布の仮 定云々以前に,実質科学的な意味が希薄になった算術平均の差の 分析をすること自体の意義がなくなってしまうのだと思います. 一方,逆数を計算し,「反応の鋭敏度」という新しい変数を構成 すると小数の外れ値の影響はあまりうけなくなるので,「反応の 鋭敏度」の算術平均は分布の代表値としてリアリティを持ち,差 を分析することに実質科学的な意味が生じる可能性が高くなりま す. 従って,「逆数変換して「反応時間」の平均の差を分析する」の ではなくて,「「反応の鋭敏度」の差を直接解釈する」という視 点で「考察」の章を書くことが大切だと思います. あるいは,どうしても「反応時間」の尺度のリアリティで「考察」 の章がかきたければ,一般的には中央値の差を分析します(マン ホイットニなどで). この場合も「分布が正規分布でないから,数理モデルの仮定を逸 脱しない様に,しかたなく」という理由ではなくて,むしろ「中 央値の差の分析こそが,外れ値の生じ易い「反応時間」の分析に とって本質的である」ことが理由であると思います. 卒論や修士論文で質問されると,以上のように答えるのですが 実験を専門となさっている方は,どのように思われますか? -- ---------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo(St.Paul's)University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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