[fpr 994] ドライバーの反応時間の分析・検定手法について教えてください

岡本安晴

岡本@金沢大学です。

  [fpr 986]より:

>実験を専門となさっている方は,どのように思われますか?

  かって、反応時間の実験をやっていましたし(Japanese Psychological
Research,1980,1981,1982;金沢大学文学部論集,1986)、また、機会があれば
やりたいと思っています。

  反応時間そのものが研究対象であった、また、これからもそうである
と思いますが、その立場からすると、

            「リアリティ」とはなにか?

ということになります。

  Stevens(1939)は、操作的に確認できないものはナンセンスであると
していますが、このStevensの意味でのリアリティとは何かと問うことが
できますが、しかし、それはさておくとして、fast guessモデル(Ollman,
Yellot)では、被験者の複数の内的状態をモデル化しています。

  また、LinkのWave theoryでは、被験者のバイアスが連続変量で表わされ
ていて、この値は試行毎に変わりうるものです。

  要するに、被験者がぼんやりしていることもあるとするなら、そのことをも
組み込んだモデル構成を行うというのが「リアリティ」のある方法だと思い
ます。


  [fpr 988]より:

>>お尋ねの件、私の専門である認知心理学の領域でも反応時間の分析を
>することが多いので
>>すが、その際には測定値に対数変換を施し、その変換値に対して
>分散分析やt検定を行う
>>のが一般的な方法のようです。また、各被験者を同一条件で複数回
>測定した場合、中央値
>>をその被験者の測定値とし(被験者内の反応時間の分布も正規分布に
>従わないことが多い
>>ため)、さらに、各条件の代表値としては通常の算術平均ではなく
>幾何平均を示すようで
>>す。
>
>以上は私の専門分野での「しきたり」であって、確たる理論的根拠が
>あるわけではないの
>かもしれませんが、それなりに筋の通った対処法だと思うので、

  「しきたり」というだけでは、「赤信号、皆で渡れば怖くない」と
いうことになりかねません。
  また、「筋の通った」とありますが、どのような「筋」なのか書かれて
いません。

  1980年頃、認知心理学の始めの頃になりますか、そのころ反応時間を
用いている論文を読んでいて気になったことがあります。論文といっても
反応時間そのものを数理モデルで扱ったものではなく、認知心理学に
分類されるものですが、分散分析を行っていて有意差が認められるか
どうかだけが問題にされていたのです。その差がデータ全体の変動量の
何パーセントを説明するものなのかは問題にされていないのです。
また、差が認められてそれを例えば左右両半球の機能の違いで説明する
とき、その差の大きさが左右半球間の信号の伝播に釣り合うものなのか
どうかについての言及もありませんでした。

  有意差が認められても、その差がデータ全体の数パーセントしか
説明し得ないものなら、残り九十数パーセントについてはどう考え
るのでしょう。



                                            岡本安晴
                                            c00279 (at) simail.ne.jp


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