岡本@金沢大学です。 [fpr 986]より: >実験を専門となさっている方は,どのように思われますか? かって、反応時間の実験をやっていましたし(Japanese Psychological Research,1980,1981,1982;金沢大学文学部論集,1986)、また、機会があれば やりたいと思っています。 反応時間そのものが研究対象であった、また、これからもそうである と思いますが、その立場からすると、 「リアリティ」とはなにか? ということになります。 Stevens(1939)は、操作的に確認できないものはナンセンスであると していますが、このStevensの意味でのリアリティとは何かと問うことが できますが、しかし、それはさておくとして、fast guessモデル(Ollman, Yellot)では、被験者の複数の内的状態をモデル化しています。 また、LinkのWave theoryでは、被験者のバイアスが連続変量で表わされ ていて、この値は試行毎に変わりうるものです。 要するに、被験者がぼんやりしていることもあるとするなら、そのことをも 組み込んだモデル構成を行うというのが「リアリティ」のある方法だと思い ます。 [fpr 988]より: >>お尋ねの件、私の専門である認知心理学の領域でも反応時間の分析を >することが多いので >>すが、その際には測定値に対数変換を施し、その変換値に対して >分散分析やt検定を行う >>のが一般的な方法のようです。また、各被験者を同一条件で複数回 >測定した場合、中央値 >>をその被験者の測定値とし(被験者内の反応時間の分布も正規分布に >従わないことが多い >>ため)、さらに、各条件の代表値としては通常の算術平均ではなく >幾何平均を示すようで >>す。 > >以上は私の専門分野での「しきたり」であって、確たる理論的根拠が >あるわけではないの >かもしれませんが、それなりに筋の通った対処法だと思うので、 「しきたり」というだけでは、「赤信号、皆で渡れば怖くない」と いうことになりかねません。 また、「筋の通った」とありますが、どのような「筋」なのか書かれて いません。 1980年頃、認知心理学の始めの頃になりますか、そのころ反応時間を 用いている論文を読んでいて気になったことがあります。論文といっても 反応時間そのものを数理モデルで扱ったものではなく、認知心理学に 分類されるものですが、分散分析を行っていて有意差が認められるか どうかだけが問題にされていたのです。その差がデータ全体の変動量の 何パーセントを説明するものなのかは問題にされていないのです。 また、差が認められてそれを例えば左右両半球の機能の違いで説明する とき、その差の大きさが左右半球間の信号の伝播に釣り合うものなのか どうかについての言及もありませんでした。 有意差が認められても、その差がデータ全体の数パーセントしか 説明し得ないものなら、残り九十数パーセントについてはどう考え るのでしょう。 岡本安晴 c00279 (at) simail.ne.jp
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