[fpr 1012] Pooled SD or SD of Means?

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

Toyoda Hideki さんが以下のように書いています:

> この論文の Table1 と Table2 には全体的に計算ミス
> があります.たとえば1例を挙げると,「関係」という要因の「仲良し」
> という水準の標準偏差は0.68です.この値を計算したセル別の標準偏差
> を拾うと
> 
> 0.98, 1.00, 1.04, 1.07, ..., 0.99, 1.04, 1.00
> 
> となります.0.68を下回るものが1つもありません(下の注参照).こ
> のような矛盾が Table1 と Table2 にはたくさん登場しており,全体的
> に計算ミスをしています.標準偏差の計算ミスは平均値の差の考察に強
> く影響しますので「結果と考察」の章の記述・解釈がおおかた信頼でき
> ない状態になっています.
 
> 注------------------------------------------------------------
> ある要因には水準がABCと3あり,水準内の3つの標準偏差を計算し,
> (これをSA,SB,SCと呼び)次に水準を込みにして標準偏差を
> 計算し,(これをSTと呼び)STがSA,SB,SCのどれをも下
> 回っていたら元のデータを見る間でもなく,計算間違しているとわ
> かります.
> --------------------------------------------------------------

この研究では,「関係」などの要因がすべて被験者内要因になっているようです。
すると「関係」という要因の「仲良し」という水準に限定して考えると,残りの
3要因の水準数の積だけ,つまり2×3×4=24個の「変数」があるとみなせ
ます。

ご指摘の表のタイトルは「項目別要因別平均値」となっていて,問題となってい
る標準偏差は「関係別平均」という見出しの下に括弧に入れられています。そし
て表の注には「( )内は標準偏差」とあります。

そこで考えられるのは,上記の24変数について個人ごとに平均を求めたものを
「関係別平均」とし,それの標準偏差,つまり個人ごとの平均値の標準偏差を計
算し,それを括弧に入れて示したのではないか,ということです。

こういう推理をするより,ご本人に直接確かめるのが一番でしょうが,「こうい
うふうに解釈することもできる」という意見を述べました。(ただ,全員が24
項目について回答しているわけではなく,系統的に欠損値が発生するデザインに
なっているので,平均をとると言っても単純にはいかないと思います。論文にも
明記されているように「計画的なデータ収集ができなかった」ことが,分析の際
の障害になっているようです。)

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南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 
〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科
TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807

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