南風原@東大教育心理です。 Toyoda Hideki さんが以下のように書いています: > この論文の Table1 と Table2 には全体的に計算ミス > があります.たとえば1例を挙げると,「関係」という要因の「仲良し」 > という水準の標準偏差は0.68です.この値を計算したセル別の標準偏差 > を拾うと > > 0.98, 1.00, 1.04, 1.07, ..., 0.99, 1.04, 1.00 > > となります.0.68を下回るものが1つもありません(下の注参照).こ > のような矛盾が Table1 と Table2 にはたくさん登場しており,全体的 > に計算ミスをしています.標準偏差の計算ミスは平均値の差の考察に強 > く影響しますので「結果と考察」の章の記述・解釈がおおかた信頼でき > ない状態になっています. > 注------------------------------------------------------------ > ある要因には水準がABCと3あり,水準内の3つの標準偏差を計算し, > (これをSA,SB,SCと呼び)次に水準を込みにして標準偏差を > 計算し,(これをSTと呼び)STがSA,SB,SCのどれをも下 > 回っていたら元のデータを見る間でもなく,計算間違しているとわ > かります. > -------------------------------------------------------------- この研究では,「関係」などの要因がすべて被験者内要因になっているようです。 すると「関係」という要因の「仲良し」という水準に限定して考えると,残りの 3要因の水準数の積だけ,つまり2×3×4=24個の「変数」があるとみなせ ます。 ご指摘の表のタイトルは「項目別要因別平均値」となっていて,問題となってい る標準偏差は「関係別平均」という見出しの下に括弧に入れられています。そし て表の注には「( )内は標準偏差」とあります。 そこで考えられるのは,上記の24変数について個人ごとに平均を求めたものを 「関係別平均」とし,それの標準偏差,つまり個人ごとの平均値の標準偏差を計 算し,それを括弧に入れて示したのではないか,ということです。 こういう推理をするより,ご本人に直接確かめるのが一番でしょうが,「こうい うふうに解釈することもできる」という意見を述べました。(ただ,全員が24 項目について回答しているわけではなく,系統的に欠損値が発生するデザインに なっているので,平均をとると言っても単純にはいかないと思います。論文にも 明記されているように「計画的なデータ収集ができなかった」ことが,分析の際 の障害になっているようです。) --- 南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科 TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807
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