[fpr 1016] 笠井論文のデータ解析の問題点

豊田秀樹

豊田@立教大学です

南風原さん,守さん,フォローありがとうございます.

"Haebara, T." <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました:
>南風原@東大教育心理です。
>この研究では,「関係」などの要因がすべて被験者内要因になっているようです。
>すると「関係」という要因の「仲良し」という水準に限定して考えると,残りの
>3要因の水準数の積だけ,つまり2×3×4=24個の「変数」があるとみなせ
>ます。
>ご指摘の表のタイトルは「項目別要因別平均値」となっていて,問題となってい
>る標準偏差は「関係別平均」という見出しの下に括弧に入れられています。そし
>て表の注には「( )内は標準偏差」とあります。
>そこで考えられるのは,上記の24変数について個人ごとに平均を求めたものを
>「関係別平均」とし,それの標準偏差,つまり個人ごとの平均値の標準偏差を計
>算し,それを括弧に入れて示したのではないか,ということです。
>こういう推理をするより,ご本人に直接確かめるのが一番でしょうが,「こうい
>うふうに解釈することもできる」という意見を述べました。(ただ,全員が24
>項目について回答しているわけではなく,系統的に欠損値が発生するデザインに
>なっているので,平均をとると言っても単純にはいかないと思います。論文にも
>明記されているように「計画的なデータ収集ができなかった」ことが,分析の際
>の障害になっているようです。)

p.79, 右ページ下から 11 行目に,「小学生の項目別,および各要因の水準別
平均値と標準偏差を TABLE 1 に示した.」と明記されていますから,( .68)を
平均値の標準偏差と読ませるのは無理です.平均値の標準偏差が表に載ってい
るのなら,それとは異なる標準偏差とは書かないはずです.何故,標準偏差で
はなく,平均値の標準偏差をここに載せたのかという理由を書くはずです.

著者は被験者内要因を扱っていないと推理されます.その根拠はp.79, 右ペー
ジ下から 9 行目に「,一元配置分散分析をしたところ,」とあり,「被験者を
ブロックとして」とか「くり返し測定の」という修飾部がなく,分析に際して
被験者内要因の存在に言及していないからです.そもそも,読者が推理を必要
とする論文というのは,大きな問題があります.

また,この一元配置分散分析のやりかたには相当に問題
があります.いじめの程度に対する変動要因としては「提示パターン」「関係」
「人数」「背景」「形態」「被験者」と6つの要因があり,この状態で「提示
パターン」だけを要因としてとりあげ一元配置分散分析をすると,残りの5つ
の要因のいじめに対する変動は誤差になってしまい(局所管理の逆ということ
になり)有意差は非常に出にくくなります.有意差が出て欲しくない文脈でこ
れをするのはアンフェアです.

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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
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