[fpr 1024] 笠井論文のデータ解析の問題点

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

Toyoda Hideki さんが以下のように書いています:[fpr 1002]

> 笠井孝久「小学生・中学生の「いじめ」認識」教育心理学研究,第46巻
> 第1号(1998) 
> という最近公刊された論文について意見を述べます.この論文の概要は
> 「小中学生はどんな行為を「いじめ」と認識するのだろうか?この研究で
> は、加害者と被害者の関係(仲よし・交渉なし・仲悪い)、加害者の人数
> (単数・複数)、行為の背景(面白い・しかえし・ぼんやり)、行為の形
> 態(悪口・暴力・無視・嫌がらせ)を組み合わせて72通りの架空の行為場
> 面を作り、質問紙法によって、それぞれの行為が「いじめ」とみなされる
> かどうかを小中学生に判定させた。その結果、「無視」は小学生では「い
> じめ」と認識されにくいが、中学生では「いじめ」と考えられていること
> などが明らかとなった。(KR,守さん編著
> http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/kr/kr0401.html
> ,より引用しました)
> というものであり,とても実践的なテーマを扱った論文です.

Toyoda Hideki さんが以下のように書いています:[fpr 1021]

> 「被験者への負担の軽減などの観点から,」などというのは(表現はきついです
> が)ひとのせいにしている,といわれてもしかたがないと思います.被験者間要
> 因を採用して汗を分析者が負担すればよいからです.「計画的なデータ収集がで
> きなかった」というのなら,そのデータを使って論文を書かねばよいのです.

72通りの架空の行為場面について,それぞれの行為が「いじめ」とみなされる
かどうかを判定させる,というとき,同じ被験者群に全部の場面を判定してもら
うというのは自然な発想だと思いますし,「被験者への負担」を考えて,全部の
場面ではなく一部だけ判定してもらうというのもおかしくないと思います。ただ,
全部でなく一部となると,確率モデルを導入して統計的推論をおこなうというと
き難しくなってくるのですが,記述的な結果としてはそれなりに意味のあるもの
が得られると思います。(データ収集の時点で,適用する確率モデルや分析法に
ついて十分な見通しがなかったという問題は指摘できますが。)

ところで,「被験者間要因を採用」してデータ収集・分析をすべきだというご提
案ですが,この研究の場合だと被験者を72群に分けるということでしょうか。
それとも被験者内要因としているものの一部を被験者間要因にして混合計画にす
るということでしょうか。

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南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 
〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科
TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807

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