[fpr 1033] 標本調査

鈴木督久

Tomokazu HAEBARA <haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp> さま

鈴木督久(日経リサーチ)です.

》その「単純な統計的データ解析」の手続きを少し説明していただけますか?
》標本抽出理論の虚構性ばかりが感じられる心理学畑にいると,統計が本当に
》役立つという「美談」を味わいたいので。

「美談」か「雑談」か分かりませんが,「少し説明」しますと,基本的な手続
きは朝,毎,読などの紙面に解説されているとおりです.林知己夫・高倉節子
(1964)の方法からあまり変わっていません.過去の調査測定値と実際の選挙得
票値で回帰モデルを準備しておいて,今回の測定値から「推定得票率」を作る
のが第1段階です.私は非標本誤差の一種を除去しているのだと解釈していま
す.次にこの「推定得票率」から候補者の当選確率や政党別獲得議席の区間推
定をします.第2段階は各社で多少の相違があるかも知れません.私は数式を
導くのが面倒なのでブートストラップ法を使っています.
標本調査で得た比率を母比率の点推定値だと考えて標本誤差を計算すると間違
えるので,カタヨリの除去が大切な作業です.つまり調査は実態ではない.
実態だと考えると回収率が50%で,そのうち50%が無回答なんて調査では発狂し
てしまいます.有権者名簿でなく電話帳を抽出リストにするなんて統計ごろつ
きの反体制ということになってしまいます.理論は無力かというと決定的に有
力だと思います.理論は虚構でいいと思います.極限的な虚構でいいと思いま
す.究極的な虚構の極限を完成した姿で設定できれば,現実はそこからの偏差
の程度や形態として一貫した整合性のもとで記述できる可能性があるからです.


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