[fpr 1073] SEM応用事例

豊田秀樹

豊田@立教大学です

Yasuharu Okamoto <c00279 (at) simail.ne.jp> さんは書きました:
>岡本@金沢大学です。
>  "[fpr 1068] SEM応用事例" に次のように書かれています:
>>ペンティアムを利用した計算機を使用すれば実用的な規模の共分散構造モデ
>>ルの解の計算は数秒から数十秒で済んでしまう。ソフトウェアもウインドウズ
>の GUI
>> を取り入れて日進月歩で使い易くなっている。
>  上の文が頭にあったので、先日の統計学会の報告会場に来られていた
>業者の方のデモンストレーションを見せて頂きました。私の経験と比較
>できるように、因子分析の最尤法による解を求めるのをやってもらいました。
>  結果の表示において、探索の打ち切り回数は表示されるのですが
>収束判定条件の表示はありませんでした。これでは、極値が求められたのか
>どうかが判りません。使用アプリケーションはSPSSです。向かいにSASの
>コーナーもあったのですが、係の人が忙しそうだったので、SASの
>デモンストレーションは見ておりません。
>  上の文([fpr 1068])にある「数秒から数十秒で済んでしまう」は
>どのような収束条件でのことなのでしょうか。

収束条件にはいろいろありますが,小生がしばしば参照するのは微係数の絶対値
の最大値です.
spssのAMOS3.6の収束基準のデフォルトは,微係数の絶対値の最大値
が 0.00001 以下です(マニュアルp208).CPUの進歩にあわせて後発の
ソフトは厳しいデフォルトの基準が設定されているものと思われます.

さてお問い合わせの「「数秒から数十秒で済んでしまう」はどのような収束条件」
なのかに付随したお話をいたします.

収束時間にもっとも影響するのは,観測変数の数です.具体的には

豊田・前田・室山・柳井
高等学校の進路指導の改善に関する因果モデル構成の試み
1991 教育心理学研究 Vol.38 No.3 P.316-323.

の観測変数20個のモデルを計算したときの経験で上記の記事は書きました.
最初は共分散構造モデルそのものがよくわかっていなくて,
このモデルは90年の7月から計算を始めて,最終的なモデルにたどり着くのに
作っては直しの繰り返しで,3ヶ月かかりました.1回の計算に要する時間は
最初のうちは1時間くらい,だんだん関数の形状がよくなり40分くらい
最終的な解では20分くらいでした(PC9801,RA,SAS,CALIS,収束基準は0.001
論文に載せるモデルが決まった段階で0.00001でもう一度計算しなおします).
RUNのボタンをおしたら,別の仕事をして,しばらくしてから結果を見にくる
というパターンを延々と繰り返しました.このようにモデルの「良さ」も計算時間に
影響します.
ところがペンティアンの計算機を手にして,ためしに論文に掲載した全く同じモ
デルを計算したところ,10秒以内で解が求まり,そのとき「気軽につかえる時
代が来た」と実感しました.ペンティアンの計算機では,RUNのボタンを押して
別の仕事をしなくてもいいからです.お問い合わせの収束基準は,それが
微係数の絶対値の最大値であるなら,共分散構造分析の場合は,計算時間にそれ
ほど影響しません.といいますのは,解の近傍までたどり着くことさえできれば,
微係数の絶対値の最大値は「あっ」という間に小さくなります.

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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
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