[fpr 1081] 反復の収束性など

岡本安晴

岡本@金沢大学です。

  "[fpr 1079] 反復の収束性など"より:

>因子分析モデルや共分散構造モデルのような非線型モデル
                                          ^^^^^^
  どのような意味で非線型モデルなのでしょうか。
  柳井ら(1990)「因子分析」の因子分析の場合の(2.11)式(p.16)、
共分散構造分析の場合の(6.3)、(6.4)、(6.7)式は因子に関して
1次式になっています。その意味で"線型"モデルと分類されるべき
ものではと思います。


>>  尤度は確率ですから、1が上限になりますので、いくらでも
>>大きくなるという可能性はない、ということになります。
>
>離散型分布については上記のことは正しいです.が,例えば,正規分布
>N(mu,sigma^2) で,x=mu (or mu=x)である場合を考えてみると,
>exponential の部分=1となり,sigma => 0 とすると尤度は無限大に発散
>します.

  御指摘の通りです。
  連続量のときは、尤度は確率密度関数から構成するので確率ではない
ということを忘れていました。拙著「Delphiで学ぶデータ分析法」
(p.161)では、そこのところを明記しておいたのですが。


>>  ただ、上に有界であっても、パラメータ値が有界な閉集合でない
>>場合は最大値がないということもあります。
>
>おっしゃるとおりです.数学的には,母数空間がコンパクト(有界・閉集合
>,ユークリッド空間の場合)であり,最大化したい関数が連続であれば,最
>大値は必ず存在します.が,それは数学的に存在することであってそれをど
>のようにして探すか,ということは別問題です.存在性の証明が
>constructive way でないからです.

  最大値が存在しない場合でも、数値計算上は収束判定基準が満たされ
極大値に収束したと判定される可能性があります。

      f(x,y) = -1/(1 + x*x + 2*y*y)

の場合、極大値は存在しません。しかし、収束判定基準を偏導関数の
絶対値の最大値が基準値以下とおいたときは収束したと判定される
可能性があります。xおよびyの絶対値が大きくなるにつれて
偏導関数の絶対値は0に近づきます。したがって、偏導関数の絶対値に
ついての条件を収束判定基準とするときは極値探索の方法によっては
誤って収束値が返される可能性があります。

>現象的にはどちらかというと逆で,因子相関を入れないと
>識別性が満たされ
>ず,推定できないことがあります.
      ^^^^
  この推定ということが、収束値が返されるということでしたら、
上のf(x,y)におけるような事情で誤って収束したと判定された
可能性があるのでは、と思います。


>ただ,この問題は因子回転の反復の収束性の問題で
>,尤度を最大にするとき(共通性を求めるとき)には
>考えなくてもいい問題
>です.

  というより、因子分析における最尤法では直交モデルが用い
られています(柳井ら(1990)「因子分析」,p.55、下から4行目)。



                                   岡本 安晴
                                   c00279 (at) simail.ne.jp


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