岡本@金沢大学です。 [fpr 1094]より: >”芝 祐順「因子分析法」(1983、第3刷)”をさがして読もうとしました >また,大阪市市内の大型書店に何軒かいったのですが, >この本は置いていませ >んでした. アプリケーションの使用法解説書が全盛の状態ですからでしょうか。 残念なことだと思います。 芝先生の御本を引用したのは、私の手元の本を見たときに ちょうど固有値が負の場合があげられていたからです。 固有値が正であるとは限らないということが必ずしも明記されて いなくてもよい、ということでしたら、因子分析の解説書は、 いろいろ本屋に並べられています。著者によって何に重点を置いて 書くかが異なりますので適当なのを選ばれたらよいと思います。 私はこの冬休み、 柳井・繁枡・前川・市川「因子分析」朝倉書店(1997、第4刷) を読みました。 因子分析は、因子という変数でデータの情報を説明するものです。 因子分析モデルとは、データがm個の変数x(i)からなり、因子が p個の変数f(j)からなるとき、 x(i) = a(i,1)*f(1) + .... + a(i,p)*f(p) + e(i) 式(1) というf(j)についての1次式でx(i)を表わすものです。e(i)は誤差項です。 因子分析とは、何らかの方法で係数a(i,j)を求めることだと考えられます。 このとき、設定される目的関数に相関行列が含まれるので、因子分析に おいて、相関行列を因子分析にかける、という言い方が生まれたのだと 思います。 相関行列をR、x(i)を標準化して表わした行列をZ、データの個数を nとするとき、 R = (1/n)Z'Z 式(2) となります(豊田さんが説明なさってますが[fpr 1096])。 式(2)の右辺で表わされる行列は(半)正定値になります。これは 固有値で言うと、固有値に負のものがないということです。 しかし、Rの値が式(2)で与えられるものでないとき、すなわち、 相関係数を要素としないとき、(半)正定値という保証はなくなります。 >それではこの相関行列を因子分析をかけれる,かけれないと言う判断は >どのようにして解るのでしょうか 式(1)のモデルが設定できるかどうか、ということになります。 >人間の操作(感覚)を言葉によって評価することは,個人個人の差があり >非常に難しいです. [fpr 1089]には以下のように書かれています。 >2,個々の用語を1対つづ組み合わせ意味の相似性を双極7段階で >評価をする >1対の用語の意味の同意性・反意性に対して与えられた評点 >(+1〜−1)を各対ごとに集計し平均値をもと >める . 私は現在の研究テーマの1つとしてSemantic Differential法 (意味微分法、SD法)というものをやっております。これは、 言葉によって概念なり対象を評定して分析を行うものです。 藤田さんのデータ分析の目的は、 (1)コンポジットレジンを評定するための評定語を選ぶ。 (2)評定語は対の形で選定する。 ということだとしたとき、次の2つの方法があると思います。 (A)データの分析法としては因子分析法を用いる。 (B)因子分析法の分析方法も考えてみる。 (A)の場合、豊田さんご指摘の通り[fpr 1096]、藤田さんのいう 同反意評価行列にそのまま因子分析を適用することは理論的には 出来ません。37語の相関行列が必要です。 つまり、37語を使った評定データを集め、その評定データから 相関行列を算出します。37語の評定データを集めるときは、 評定対象はコンポジットレジンかそれと同等のものにします。 評定対象が変わると評定後の構造も変わることがあります。 また、評定語を対にすることにこだわっておられるようですが、 「柔らかいーかたい」など、日常の慣習として認められている 対を用いるときは、他の研究者からのコメントが多分ないであろう という意味で、問題ないと思いますが、そうでない語(ねちゃつく) の場合、対にするべきかどうか、問題です。 日常的に認められている評定語対、「柔らかいーかたい」など、 でも、1つ1つ別個に用いて評定データを集めると、反対語の 評定として機能していない、評定者は、評定対象を、「柔らか」で かつ「かたい」ものであるというような評定をすることが無視 できない頻度で認められます。平均値でみれば反対語として 機能していますが。つまり、平均値で見たとき、「柔らかく」 かつ「かたい」ということはないといえますが。 従って、対にせずに、1つ1つの語によってそのまま評定しても よいのでは、と思います。 (B)の場合、同反意評価行列の要素を評定語間の類似度を表わす、 と見れば、多次元尺度法などの分析法が使えます。 もちろん、上の(A)の場合としてあげた、37語による評定 データに対しても、展開法のデータの形であると見て、分析する ことができます。この形の分析法として数量化4類の基準による 展開法を私は試みてきておりますが、この分析法のための プログラムは8月中にWebページ http://www.users.kudpc.kyoto-u.ac.jp/~e50048/ にアップロードする予定ですので、チェックしてみて下さい。 岡本 安晴 c00279 (at) simail.ne.jp
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。