[fpr 1106] Q:相関係数について

岡本安晴

岡本@金沢大学です。


  "[fpr 1104] Q:相関係数について"より:

>この、質問内容で良いものかご意見を聞かせてください。

  いろいろと問題があると思います。

>質問1)あなたは、各種相関係数のP値が0.05以下で有意であっても相関があ
>るとは限らない事を知っていますか?  (はい、いいえ)

  上の質問は、あることを事実として、そのことを知っているかどうかを
聞いています。しかし、事実として扱われていることがいろいろな解釈を
許す議論のある事柄です。
  まず、相関があるとはどういう意味でのことか明記されていません。
  「有意であっても」という語句が先行していますから、検定一般の
議論として、統計的に優位ということは第1種の誤りの確率で、帰無仮説
「相関が0」という可能性があるということを指しているととれます。
  また、数理統計学的には0であれば相関はない、0でなければ相関はある、
ということですが、「相関がない」ということが問題としている領域では
「無視できるほどの小さい値である」ということをいっているかどうか、
意味がはっきりしません。


>質問2)質問1で「はい」と答えられた方のみにお聞きします。

  質問1「相関があるとは限らないことを知っていますか」という
ことに対して「はい」と答えた場合、相関がない方に答えるバイアスがかかる
のでは、と思います。兎も角、主観的なことを調べるときに、相手の知識量
を問うような質問はできるだけ避けた方がよいと思います。

>相関係数は分野毎というより研究者毎にその数字に対
>する感覚そのものが既に異なっているかもしれない事を調べるにはどのような
>手法を使ったら良いのでしょうか。

  日ごろ接する相関係数の値は分野によって異なります。Psychophysicsでは
かなり大きな値も期待できます。社会心理学や認知心理学の分野では高い値は
稀ではないかと思います。相関係数に対する感覚は日頃接している数値によって
形成される文脈の影響も大きいと思います。質問1の上の個所は、「はい」か
どうかではなく、その人の研究分野を聞く方が、調査の目的から考えてより
適切なのではと思います。


>ある2変量の相関係数が0.5でありP値が0.05以下と有意の場合、2変量間の相
>関はどのように感じますか?

  P値を与えている理由は何でしょうか。母数の推定量としての変動量を
示しているのでしょうか。変動量を示すのでしたらサンプル数を示す方が
適切です。P値はサンプル数の下限を推定させるだけです。
  また、2変量の相関というとき、母数としての相関係数(正規分布を
仮定)のことでしょうか、得られたデータに対するものでしょうか。
データの分布の様子を示すものとしてならP値の情報としての重要度は
低くなります。P値は母数の検定に用いるものですし、母数の区間推定を
行うならサンプル数が必要です。

  相関係数の値についての主観的評価を調べるということでしたら、
psychophysicsにおけるmagnitude production法にならって、例えば、
「中程度の相関がある」とはどの程度の値か、というように聞くことも
できます。



                                                  岡本 安晴
                                                  c00279 (at) simail.ne.jp


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