南風原@東大教育心理です。 守 一雄 さんが以下のように書いています:[fpr 1180] > 以下は、服部さんからいただいた数値の表です。 > > > 2群の場合の検定力をspaで計算しますと, > > ---------------------------------------------- > > 仮説 d n1(=n2) α 検定力 > > ---------------------------------------------- > > 両側仮説 0.2 142 0.05 0.39 > > 両側仮説 0.5 142 0.05 0.99 > > 片側仮説 0.2 142 0.05 0.52 > > 片側仮説 0.5 142 0.05 0.99 > > ---------------------------------------------- > > > > また,1群のt検定(対応のあるt検定)の場合は > > ---------------------------------------------- > > 仮説 d n α 検定力 > > ---------------------------------------------- > > 両側仮説 0.2 142 0.05 0.66 > > 両側仮説 0.5 142 0.05 1.00 > > 片側仮説 0.2 142 0.05 0.77 > > 片側仮説 0.5 142 0.05 1.00 > > ---------------------------------------------- ちょっとテクニカルな話になります。 2つめの表のことですが,1群のt検定(一組のデータの母平均がある定数に等 しいという仮説の検定)と,対応のあるt検定(事前事後データやマッチングさ れた対のデータによる検定)は,ここでは区別して考える必要があると思います。 1群のt検定の場合は,母平均μと定数cの差を,母標準偏差σで割ることによ って,効果量が ES_1=(μ−c)/σ (1) と定義されます。 対応のあるデータの場合は,各対ごとの差をDとして,効果量を ES_2=μD/σD (2) によって定義すれば,これは(1)でc=0とした場合と同じ扱いができますから, 1群のt検定の検定力分析のプログラム(GPOWERなら"Other t-tests")がその まま使えます。しかし,これら2つの効果量は,分母の意味がまったく違います から,その値を同じように解釈することはできません。また,独立な2群のとき に用いられる効果量 ES_3=(μ1−μ2)/σ (3) は,(1)とは同じように解釈できますが,(2)とはやはり分母の意味が違います。 そこで,対応のある場合にも,独立な場合と同様に(3)によって効果量をまず定 義し,それを検定力分析の目的のために(2)に変換することを考えてみます。た とえば事前と事後,それぞれの母平均をμ1,μ2とし,事前と事後に共通の母標 準偏差をσとすると,(2)の分子は μD=μ1−μ2 (4) 分母は σD=σ{2(1−ρ)}^.5 (5) となります。ここでρは対応のあるデータ間の母相関係数です。このρの見当を つければ,それを用いて, ES_2=μD/σD =(μ1−μ2)/[σ{2(1−ρ)}^.5] =ES_3/{2(1−ρ)}^.5 (6) のように,設定に便利な効果量ES_3から計算に直接必要な効果量ES_2が求められ ます。 上の2つめの表は,効果量dとして(2)のES_2が用いられているようです。もし 上の1つめの表と比較可能なように(3)のES_3のほうをdとするのなら,表のd の値を(6)で変換した値を効果量として入力する必要があります。(なお,(6) から分かるように,ρをちょうど .5 とするなら変換は不要になります。今回の 一連の議論の発端となったデータではr=.48でしたから,これをρとして使用 すれば,上の2つめの表は,ほぼそのまま利用できることになります。) --- 南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科 TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807
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