[fpr 1269] 日本新聞協会主催の心理テスト

豊田秀樹

豊田@立教大学です

"Y.Hasegawa/長谷川芳典" <hasegawa (at) cc.okayama-u.ac.jp> さんは書きました:
>長谷川@岡山です。
>11/3の朝日新聞に“紙上心理学実験室:「ホントのあなた」プレゼント”という全面広告があ
>り、50個の質問項目が掲載されていました。広告主は日本新聞協会、監修は富田隆氏となって
>います。
>新聞協会:
>http://www.pressnet.or.jp/
>のホームページから当該の箇所を拝見したところ、このテストは「エゴグラム」に基づくもの
>であり、ネット上でたまに話題になる
>http://www.taisei-e.co.jp/seikaku/index.shtml
>というサイト(福島寛氏監修)と同一形式で「診断」していることが分かりました。
>今回の心理テストは、日本新聞協会の企画でもあり、また大新聞に全面広告という形で紹介さ
>れていることから、その影響は計り知れないものがあると思われます。
>エゴグラムの理論自体は別としても、質問項目選定のプロセス、妥当性や信頼性、その利用の
>され方について、何らかの議論の必要を感じております。

今回は,そのまま使用しているみたいなので,それと以下の文章は,直接は関係
しないのですが...上記,長谷川さんの記事に触発されたことを少しかきます.

だいぶ前のことなのですが,ある雑誌の編集をしている人から,心理検査を掲載
したいので作成して欲しいという依頼を受けたことがあります.検査の目的を聞
いて,自分の感心に近かったので,とりあえずお引き受けしました.項目作成か
ら項目分析までのプロセスを見積り,提示したところ,謝礼だけで,開発費はだ
せませんといわれました.それでは検査は作れないでしょうというと,既存の
検査の項目を適当に組み合わせてくださいといわれました.それで結局断りました.

マスコミに載っている検査の多くは,既存のテストのカクテルか「エイヤッ」
と作成者の「洞察」に基づいて作られることが多いのかなとおもいます.ただ,
多くの場合にちゃんとテストを作っていたのでは雑誌はペイしないのです.その
結果,きちんと吟味されないものがマスコミに出回り,心理学は誤解され,一方,
学術雑誌に載った尺度は,ほとんど使われないという困ったことになってます(
性格心理学会の人たちはどう考えるのだろう?).

学術雑誌で発表されている尺度はたくさん有るので,むしろマスコミの人たちは
そういう人にコンタクトをとってたとえ小額でも使用料をはらう(自分の尺度が
使われるのはうれしいから大金を払ってくれなくていいと思う人は少なくないの
では)という慣習を形成すべきだとおもいます.

逆に心理学者はソフトウェアと同様に,フリーウェアやシェアウェア宣言などを
して,「自由に使ってOK」とか「営利目的の場合は使用料**円をはらう」とか
「全ての使用はテストを購入しなくてはいけない」等の使用条件をはっきりさると
いいのでは?今のように,テストは許可・使用料が必要という雰囲気の中では(
そうでないものも本当は多いのだろうけど),ほとんどの検査は作られるだけで,
使われない.育たない.尺度作りましたという論文ばかり多くなってしまう.
フリーウェアの優秀な心理検査が出回れば,いろいろな意味で研究が活性化する
と思うのですが...この分野の専門家の御意見がいただければ幸いです.

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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
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