狩野@大阪大学です Guttman rule「相関行列の固有値>1の個数」はそんなに悪くないと思います.しか し,この規準だけで因子数を選定するのではなく,これを含めて Scree 法や堀さんお 勧めのPA法,適合度(指標),解釈可能性など加味して最終決定するということで す.神のお告げのように Guttman rule を信じるのはよくありません. モデルでは「相関行列の固有値>1の個数」は因子数を過小推定することがあること が知られています.本来の因子数が5のときに3と推定してしまうことがあるわけで す.一方,「SMCを対角に置き換えた相関行列の固有値>0の個数」というルールもあ ります.このルールも因子数を過小推定することがあることが知られています.しか し,「相関行列の固有値>1の個数」よりは過小の程度は「まし」です.つまり 本来の因子数=5 「SMCを対角に置き換えた相関行列の固有値>0の個数」=4 「相関行列の固有値>1の個数」=3 ということがあり得るわけです. 以上は「モデル」の話です.実際のデータでは,これに,標本誤差と minor factors の影響が加わります.minor factors とは,分析には取り上げない(取り上げること ができない)小さな因子のことです.モデルは現状の近似にしか過ぎないですから, 観測変数に小さな影響を及ぼす因子は無視していることになります. 標本誤差と minor factors はいずれも上記ルールでの因子数の推定値を押し上げる効 果を持ちます.つまり,「モデル」では 「SMCを対角に置き換えた相関行列の固有値>0の個数」=4 「相関行列の固有値>1の個数」=3 となったとしても,データでは 「SMCを対角に置き換えた相関行列の固有値>0の個数」=5=本来の因子数 「相関行列の固有値>1の個数」=5=本来の因子数 となる可能性があるのです.もちろん,希望的観測であるかもしれないのですが.. シミュレーションでの比較は,特に minor factors の影響を specify するのが難し く,実際は minor factors がないものとして実験を行っています.従って,Guttman Rule の良さ悪さが正当に評価されない傾向にあると思われます. 豊田さんのご指摘のように適合度指標も適切な情報を与えてくれます.SASの proc factor では,Tucker-Lewis の指標を出力します.これは,共分散構造分析で有名な NNF(Non Normed Fit Index)と(漸近)同等です.私は,標本サイズが大きいときこれ をよく見ています(>0.9 ro >.95であればOK). 先日,以上のようなことやSASの因子数決定プロセスについて大学院で講義をしま した.もし,そのときの配布資料(パワーポイントのファイル)が見たい方がいらっ しゃいましたら狩野まで(fprではなく)ご連絡下さい. ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○● 狩野 裕 大阪大学人間科学部 〒565-0871 吹田市山田丘1−2 Phone/Fax:06-6879-8052 http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~kano/ ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
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