[fpr 1375] 本質的なアンバランス

豊田秀樹

豊田@立教大学です

バランスの取れていない分散分析の解釈に関してどなたかに教えてください.
発達・臨床関係の心理学の調査分野の分散分析で相談をうけると,まず確実
にバランスがとれていないデータを見せられます.少し前までは「本来,分
散分析はバランスのとれたデータに,,云々」と説教をたれたこともあった
のですが,最近ではそうしないようにしています.なぜかというとバランス
がとれないことこそが,そのデータの本質的な性質であるように思えること
が多いからです.

例をあげますと,たとえばマンションの「抽選倍率」を基準変数として「価
格(2水準)」と「魅力(2水準)」という2つの要因を想定し,情報誌か
ら無作為に抽出すると,常識的には

価格,魅力,倍率,度数(物件)
高い,高い,中 ,多い
高い,低い,低 ,少ない
低い,高い,高 ,少ない
低い,低い,中 ,多い

とアンバランスになります,安くてくて魅力があれば倍率が高いし,でもそ
んな物件は少ないということです.発達・臨床関係の心理学の調査分野では
これと同じ構造のデータがものすごく多いのです.

このとき「価格」「魅力」は本質的に(直交せず)拮抗する要因なのだから
無作為抽出せずに,無理に4つのセルの度数をそろえて,本来的な分散分析
の作法に合わせるのは,おかしいと思います.つまり要因そのものが離散的
な確率変数なのに,分散分析では要因は非確率変数なのです.無理にバラン
スをとって非確率変数として扱うと,価格が安くて魅力の高いマンションが
いいという,失敗したコンジョイント分析になってしまいます(「安くて魅
力のある物件は,そもそも,ほとんどないんだからさ」とつっこまれます).

こういう状況では平方和のタイプによる違いも大きいし,どれを使えば効果
的なのかよくわかりません.どれを使っても適切な情報が引き出せないよう
な気すらするのです(上記の場合タイプ3もよくないとおもうのですが).
どなたかよいアドバイスをお願いします.

バランスが取れていないときは,とれているときと要因が有意であることの
解釈が異なることは明らかですが,「心理学研究」誌でも「教育心理学研究」
誌でも解釈がしわけられていません.あるいは学年によって人数が違ってし
まったような,非本質的な理由によるアンバランスもあるでしょう.こうい
うアンバランスはびしびし注意するべきです.本質的なアンバランスと非本
質的なアンバランスの区別も重要だと思いますが,これもほとんどされてい
ないように思います.

(上記の相談は非常に多いので,最近では,上記の場合は「価格」と「魅力」
離散化せず,連続変数として作り,重回帰分析をして,「拙著,共分散構造
分析,入門編,P43」の10分類で解釈をすすめることにしています.い
まのところ,連続変数として扱える場合は問題が解決していると思っていま
す.この点に関しましても何かコメントがあればお願いいたします)

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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor,     Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833,   Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
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