[fpr 1413] 重回帰の交互作用

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

質問1については,了解しました。質問2についてですが,

Toyoda Hideki さんが以下のように書いています:

》"Haebara, T." <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました:
》
》>質問2:z' = a + b(X-Xbar) + c(Y-Ybar) + d(X-Xbar)(Y-Ybar) という予測式
》>においてdが正になることをもって,集団の平均からの偏差がxもyもプラスで
》>積がプラスになる人(自信がなくて孤独な人)と,偏差がxもyもマイナスで積
》>がプラスになる人(自信があって孤独でない人)が,zに関して同様な傾向をも
》>つと解釈していますが,このような解釈は妥当でしょうか。
》>予測式を仮にxとy
》>の素点を用いて z" = a' + b'X + c'Y + d'XY  とすると,d' = d となると思い
》>ますが,この後者の予測式からは上記のような解釈は出て来ないですよね。
》
》はい,出て来ません.d'の解釈は難しいです.
》
》>前者
》>の予測式は予測曲面においてなんら特別な点でない (Xbar, Ybar) に何か特別な
》>意味があるかのように思わせ,解釈を誤らせる危険があるように思うのですが...。
》
》特別な点だと思うのですが,,,,,.
》平均を中心に自信があるほうとか,ないほうとか,孤独なほうとか,孤独でないほうと
》か,それによって符号の積に意味がでてくるという研究仮説です.

上の z'(および z")の曲面は,xおよびyに関する1次導関数がゼロになる
停留点が1個ありますので,その点からの偏差の積なら,それなりに意味があ
ると思います。しかし,平均の点が停留点となるという保証はなく,一般には
平均の点は幾何学的な意味ではなんら特別ではない曲面上の一点となります。
たとえば,停留点がxおよびyの最小値よりも小さいところにあるとしたら,
データ全体が,曲面が質的に変化しない領域(xおよびyに関する導関数の符
号が変化しない領域,xおよびyの変化に伴って,z'も単調に変化する領域)
に存在することになり,平均の点はその中の一点ということになります。その
場合,その平均の点からの偏差の積をとることに,どういう意味があるのでし
ょうか。もちろん,その場合でも,曲面の曲がり具合によっては z'の式中の
dの推定値は十分大きな値になったりしますが,どの点からの偏差をとって予
測式を表現してもdの推定値は変わりませんから,そのことをもって「平均か
らの偏差の積に意味がある」という「研究仮説」が支持されることにはならな
と思います。

xyという項を予測式に入れると,yとzとの関係がxの値によって異なって
きますから,これによって交互作用を導入できたと言うことはできると思いま
す。しかし,xyという特定の項を入れるということは,もっと多様な交互作
用の可能性がある中で,特定の交互作用のあり方を仮定するということになり
ますので,xyの導入によってxとyの交互作用が一般的に表現・評価できる
というよりは,特定の非線形回帰モデルを当てはめてみるという考え方のほう
が良いのではないかと思います。それで説明力が十分高ければ,推定された予
測式による曲面を実際に描いてみて,たとえば停留点がどこにあるのか,デー
タ全体の特徴はどう記述できるのか等をみていけば良いでしょう。そうした分
析の過程で,豊田さんが例示したような平均点を境界点とした交互作用的な解
釈が出てくるかもしれませんし,その解釈以上にデータの特徴を的確にとらえ
た解釈が出てくるかもしれません。

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南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 
〒113-0033 東京大学 大学院教育学研究科
TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807

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