豊田@立教大学です 交互作用項 xy を含むモデル z = a + bx + cy + dxy + e で,x と yは平均0にしておき,x と y が2変量正規分布に従っているとします. このときz の分散が bx + cy(これを主効果と呼びます) の分散と dxy の分散 と e の分散の単純和で表現できるというのが,重要です.この性質から交互作 用の係数dを,主効果とは別に解釈することができるようになります.いっぽう "Haebara, T." <haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp> さんは書きました: >南風原@東大教育心理です。 >上の z'(および z")の曲面は,xおよびyに関する1次導関数がゼロになる >停留点が1個ありますので,その点からの偏差の積なら,それなりに意味があ >ると思います。しかし,平均の点が停留点となるという保証はなく,一般には >平均の点は幾何学的な意味ではなんら特別ではない曲面上の一点となります。 >たとえば,停留点がxおよびyの最小値よりも小さいところにあるとしたら, >データ全体が,曲面が質的に変化しない領域(xおよびyに関する導関数の符 >号が変化しない領域,xおよびyの変化に伴って,z'も単調に変化する領域) >に存在することになり,平均の点はその中の一点ということになります。 は主効果と交互作用を合わせた予測曲面の話です.上記のモデルよりもっと複雑 な項を付加しても,係数の解釈を諦めさえすれば,曲面の形状を実質科学的に解 釈することが可能であることは,予測変数が2つの場合の高次回帰モデルの一般 的なツールです(具体例に関しては,たとえば豊田・前田・柳井,原因を探る統 計学,p94ーp97を参照して下さい).ここで論じているモデルでは係数を 解釈しようと(交互作用の効果だけにも注目して解釈しようと)しているのです. >その >場合,その平均の点からの偏差の積をとることに,どういう意味があるのでし >ょうか。 たとえば5件尺度で1から5まで点を与えて,その和得点の素点をそのまま分析 したのでは,正の値のデータしかありませんから,もはやdは「自信がなくて孤 独な人は集団依存・同調性が高いが,自信があって孤独でない人も集団依存・同 調性が高くなる傾向がある」という研究仮説のを表現しないのです. もっと重要なことは,x と yの平均が0でない一般の場合は,x と y が2変量正 規分布に従っているとしても,xyと相関が生じますから,dの推定値が変わって も変わらなくても,dだけを取り出して解釈することができなくなるのです.こ の場合はあくまでも予測式全体として解釈しなくてはならない状態になります. 「x と yの平均を0にしておくこと」「x と y に2変量正規分布を仮定しても適合 度が下がらないこと」この2つの条件が重なって始めて,係数dの解釈が可能に なります.また幸いなことにxとyの平均が0のときに,dは非常に魅力的な仮説を 与えてくれます.この意味で (Xbar, Ybar)は特別な点なのです.原点の移動によ って解釈が変化するモデルを扱う場合は,偏差の取り方もすでにモデル構成の1部 となります. 「x と y が2変量正規分布に従い,(Xbar, Ybar)を中心に自信がなくて孤独な人 は集団依存・同調性が高いが,自信があって孤独でない人も集団依存・同調性が高 くなる(交互作用の)傾向が(主効果とは無相関に)ある」データなら,上記の モデルで,その性質を確認することができます. -- ---------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo(St.Paul's)University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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