岡本@金沢大学です。 堀さん@香川大学経済学部の「[fpr 1433] 因子分析と両極性」に ついてのコメントです。 私は去年の心理学会で「SD法における両極性の形容詞対を用いることの 不自然さ」について報告したりしてきていますが、その立場からのコメントで す。 >わたしは項目の意味を明確にす >るためにはSD法では両極であるほうがよいと考えています. いかなる意味での「意味」なのかが実証科学としては問題です。実証的根拠に 基づかないデータ分析者の個人的好みでは科学としては困ります。 両極性であるということを確認するデータが必要です。 >つまり,感情の次元が両極でなく単極だというのは測定誤差によるもので >それを修正すれば両 >極にきちんとなるというもの. 因子分析法、あるいはSEMによる分析結果である点が問題です。 これらのモデルは線型モデルです。最尤法を用いる場合は正規分布の 仮定があります。相関行列は線形モデルの情報を抽出します。 以上の仮定に合わない部分は誤差となります。この歪みを含んでいる 可能性のある誤差のために分析結果が歪められていたら困ります。 南風原さんが以前、多変量解析における仮定を満たさない場合の問題に についてこのfprでコメントなさったことを思い出します。 去年の心理学会でのSD法の形容詞対に関する私の報告ではクロス表で 結果を表示しました。この場合は特定のモデルを仮定する必要はありません。 両極性を疑う傾向が非線形な形で現れていました。 >経済学部の学生などもいい加減に答 >えるのでそういう使い方の方がいいかもしれない. 「いい加減」とはどういうことか、判断の難しい問題です。 Kirk (1995),"Experimental Design, 3rd ed.",1.6節に Experimenter-expectancy effect, Demand Characteristics, Subject-predisposition effects, Cooperative-subject effect, Screw you effect, Evaluation apprehension などの注意項目があります。 「いい加減」という印象をデータ分析者に与えるデータなら その「いい加減」さの分析が必要でしょうし、「奇麗な」データ のときは又それなりの注意が必要ということなのでしょう。 岡本安晴 y-okamoto (at) mbox.kudpc.kyoto-u.ac.jp (学術情報センターのメールサービス( (at) simail.ne.jp)が 来年10月で中止になるということなので、私のメールアドレスを 大型計算機センター( (at) mbox.kudpc.kyoto-u.ac.jp)に 切り替えているところです。)
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