岡本@金沢大学です。 [fpr 1439]の分散分析についてです。 一般に、同じデータに対する複数の検定結果が異なることは 分析において設定されているモデルが異なれば不思議ではあり ません。異なる検定結果が得られる理由としては、検定で用い られている統計量の関係が単調関係でないとか、多重比較の 場合のように第1種のエラーの確率が異なるなどが考えられます。 検定結果が異なる為に判断ができない、その判断がデータの 解釈において重要な意味をもっている、というときにはデータを とり直すというのが実証的な立場での方法だと思います。データ をとり直すときには、既に得られているデータなどに基づいて 検定力の検討を行い、これから集めるデータが分析の目的に対して 十分なものであるのかということも押さえておく必要があります。 あらためてデータを採り直しても、後で前のデータの分析結果と 合わせてメタ分析を行えば、両方のデータ分析の結果を踏まえた 判断が可能になります。 分散分析については、私は、あまり細かい分析を期待するべき ではないのでは、と思っております。その一番の理由が検定の 数が増えると分散分析あたりの第1種のエラーの確率が高くなる ということですが、他の理由としては、分散分析は今では歴史的 な分析法として考えるべきではという気持ちもあるからです。 分散分析は線形モデルですから回帰モデルで扱えます。回帰 モデルは行列演算が必要なので、計算機が今ほど簡単に使えな かった時代においては分散分析の方が実用的で有用な分析法で あったと思います。しかし、今ではパソコン用の統計 パッケージにより回帰分析も計算が大変なものという時代では なくなりました。 また、 「実験計画法 = 分散分析」 という風潮がありますが、これは、 分散分析を使う為には実験をどのように計画するべきか、 ということなのでしょう。 実験の計画ということであれば、何も実験計画法=分散分析 というように限定する必要はないと思います。 分散分析を用いる用いないにかかわらず、実証的研究のために データを収集するときは、そのための計画を練らなければなり ません。 金沢大学文学部 岡本安晴
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