[fpr 1441] 分散分析における要因数の問題

岡本安晴


  岡本@金沢大学です。


  [fpr 1439]の分散分析についてです。

  一般に、同じデータに対する複数の検定結果が異なることは
分析において設定されているモデルが異なれば不思議ではあり
ません。異なる検定結果が得られる理由としては、検定で用い
られている統計量の関係が単調関係でないとか、多重比較の
場合のように第1種のエラーの確率が異なるなどが考えられます。

  検定結果が異なる為に判断ができない、その判断がデータの
解釈において重要な意味をもっている、というときにはデータを
とり直すというのが実証的な立場での方法だと思います。データ
をとり直すときには、既に得られているデータなどに基づいて
検定力の検討を行い、これから集めるデータが分析の目的に対して
十分なものであるのかということも押さえておく必要があります。
あらためてデータを採り直しても、後で前のデータの分析結果と
合わせてメタ分析を行えば、両方のデータ分析の結果を踏まえた
判断が可能になります。

  分散分析については、私は、あまり細かい分析を期待するべき
ではないのでは、と思っております。その一番の理由が検定の
数が増えると分散分析あたりの第1種のエラーの確率が高くなる
ということですが、他の理由としては、分散分析は今では歴史的
な分析法として考えるべきではという気持ちもあるからです。

  分散分析は線形モデルですから回帰モデルで扱えます。回帰
モデルは行列演算が必要なので、計算機が今ほど簡単に使えな
かった時代においては分散分析の方が実用的で有用な分析法で
あったと思います。しかし、今ではパソコン用の統計
パッケージにより回帰分析も計算が大変なものという時代では
なくなりました。

  また、

    「実験計画法 = 分散分析」

という風潮がありますが、これは、

  分散分析を使う為には実験をどのように計画するべきか、

ということなのでしょう。

  実験の計画ということであれば、何も実験計画法=分散分析
というように限定する必要はないと思います。
  分散分析を用いる用いないにかかわらず、実証的研究のために
データを収集するときは、そのための計画を練らなければなり
ません。


金沢大学文学部
岡本安晴





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