岡本@金沢大学です。 行動計量学会の会報に載っていた記事についてですが、 心理学の研究方法に関連して感じたことなのでfprに 投稿しました。 狩野さんが、 「21世紀は行動計量学の時代である」 という見出しで上記会報第81号で論じておられます。 この論には、2つの論点で日頃感じていることが関係して 考えさせられましたが、その内の1つが、 「行動計量学の基礎をささえる統計学」 という記述です。 行動計量学の基礎の1つとして統計学を考えることには 異論がありませんが、上の記述では統計学が全体を支えている ということになり、このことに引っ掛かりを感じるのです。 私は心理学の研究者としての立場からは、統計学より、 モデル構成に基づく理論構成・データ分析・シミュレーションを 基礎として考え、統計学はモデル構成を助けるものという位置づけで 考える方がよいのではと思っております。 言葉の言い回しの違いに過ぎないのかも知れませんが、 行動計量学の基礎 == 統計学 という図式に敢えて異を唱えて、 行動計量学の基礎 == モデル構成(に基づく研究) という図式でとらえたいと思います。 統計的モデルというとデータ分析用の汎用モデルとして考える ことになると思います。しかし、モデル構成の1つ、ないしは 1つの要素として統計的モデルを考えることもできると思います。 一般のモデル構成自体は、それぞれの現象に特有のものが 提案されます。つまり、行動の分析(狭義の計量的分析も含めて) には、モデル構成的発想が大事であって、統計的モデルはその1つの 例、あるいは一部を提示していると思います。 狩野さんは、上記会報の記述において 21世紀は情報と宗教の時代といわれる。 と書き、情報を「コンピュータ」と読み直した上で、 宗教を「こころ」ととらえれば、 「コンピュータ」+「こころ」 = 「計量心理学」 宗教を「社会」ととらえれば、 「コンピュータ」+「社会」 = 「計量社会学」 としています。 行動計量学会の会報ですから「計量」へのバイアスがあるのだと 思いますが、コンピュータの行動科学における役割の重要性の認識 は重要だと思います。 <以下は、自己宣伝ですが、> コンピュータが心理学研究の道具として大変有用である、あるいは モデル構成に基づく分析の可能性が近年のパソコンの高機能・低コスト化 により高まったことを示す拙著「Delphiでエンジョイプログラミング」を CQ出版社から発行して頂きました(1999)。題名からはDelphiの プログラミング例の本ということになりますが、取り上げた プログラミングの対象は心理学での話題です。勿論、Delphiによる プログラミングの楽しさをも訴えたいという気持ちが十分にありますが。 付録のCD-ROMには*.exeファイルも格納されていて、Delphiがなくても 実行して楽しむことができます。 金沢大学文学部 岡本 安晴
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