[fpr 1486] 作り方と使い方

Terao Yoko

こんにちは、てらお@龍谷大学です。
先日、情報処理学会の夏のシンポジウム「教育の新時代:高校の新教科『情報』が
開く世界」という合宿に参加してきました。高校の新教科「情報」のあり方、試
作教科書の評価、現在の小中高大の情報処理教育の実態などの報告がありまし
た。内容はhttp://www.cstt.ac.jp/kami/sss99/で公開されています。

私がこれに参加したのは、情報処理学会で作った試作教科書を読んでびっくりし
たからです。(試作教科書はhttp://www.ics.teikyo-u.ac.jp/InformationStudy/
で公開されています)2003年から始まる高校の情報はA,B,Cの3種類から1つ選ん
で2単位行うことになっていますが、この試作教科書は現在大学の一般教養で
使っても、ついてこられる学生がどれくらいいるだろうかと思えるほど専門的な
内容も含んでいるのです。もちろん、試作したのが情報処理学会の分科会だから
という理由もあると思いますが。

教科書検定を通って実際に出てくる教科書がどうなるかはわかりませんが、情報
処理学会の意向が強くでた教科書であれば、かなり専門的なものになると考えら
れます。

このような教科書で教育され、そして理解できた生徒ならば、大学に入ってか
ら、岡本@金沢大学さんが書いたような↓教育についてこられるのかもしれませ
ん。

>  上のことは何も研究者育成を目的とする教育の場合に
>限られている訳ではありません。私自身は、研究者育成
>用の教育には関係しておりません。それでも、情報処理
>教育はプログラミング言語によるプログラミングを無視
>するべきではないと感じております。
>  パソコンでのワープロやWWWブラウザの操作と、プロ
>グラミングでは授業の内容が異なります。後者はプロ
>グラムの作り方であり、前者は作られたプログラムの
>使い方です。大学での情報処理教育は後者を目指すべき
>であると思います。

でも、今回のシンポジウムでは、小中の先生は熱心だけれど、高校の先生は消極
的という印象を持ちました。ただでさえ、学校5日制になって授業時間が足りな
くなるのに、総合学習の時間が3単位入って「情報」も入ってでは、どうしよう
もない、総合学習の時間は文化祭体育祭にあてて、「情報」は表向きはやったこ
とにして、できれば他の教科に回したい、という印象を受けました。

そうなると、2006年の大学新入生は、「情報」に熱心な先生がいた高校出身者と
そうでない出身者で、コンピュータ操作に大きな較差ができてくると思います。
さらにその後数年は旧カリキュラムの浪人生も入ってくるでしょう。だから2006
年からしばらくは、大学では「ほんとに初心者向け」の情報処理、「やや熟達し
た学生向け」の情報処理、コンピュータサイエンス、プログラミング、情報社会
のしくみなど様々な講義を配置する必要が出てくるのではないかと私は思いま
す。

私も最終的には自分に必要な道具は自分でちょこっとプログラミングできるよう
に教育できたらいいなとは思いますが、現実はなかなか一筋縄ではいかないよう
な気がします。
#「既成の道具で解決できる」と「自分で作る必要がある」を見分けるのも
#相当力が必要ですよね。

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   Terao Yoko    yoko (at) terao.org    http://www.terao.org/
   寺尾洋子 龍谷大学文学部

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