[fpr 1578] theoreticalについて

出口慎二

冠省

横レスで,しかも長くて申し訳ありませんが….

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追試についての議論も,私にはどうも合点がいかないところがあります.私が前に議
論した,物理で前提となる「不変性」が成立していないからです.
その辺に対するご意見お待ち申しております.;[fpr 1576]byいはられい (at) KSUさん
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逆に,「不変性」が保証されているならば,追試は必要ないのではないでしょうか.
もしくは,「不変性」が保証されているならば,追試の目的は,先行研究が正しい手
続きで行われたかのチェックのようなものになるのではないでしょうか.

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標本により得られた結果を一般化し、その一般性の範囲・限界を実証的に明らかにす
るには、標本による追試を重ねていく必要があるように思われるのですが、いかがで
しょうか;[fpr 1561]by我妻則明さん
>

この問題意識は,

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物理学で対象とする世界を静的(static)とすると,心理学が対象とする世界は,動
的(dynamic);[fpr 1568]byいはられい (at) KSUさん
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つまり,「不変性」が保証されない世界を測定するからこそのものではないでしょう
か.

「不変性」が保証されない世界では統計的手法の適用やその結果の評価に対して慎重
であるべきだ,しかし,慎重にではあっても,統計的手法の有用性は大きく,「不変
性」が保証されない世界にあっても統計的手法をそのモデルに少しでも近い形で適用
できるようにする方法を考えて行くべきでは,ということではないでしょうか.ある
いは当の我妻様は,「違うよ」,と言われるかもしれませんが.

ところで,この「不変性」という言葉ですが,私の認識はちょっと違います.むしろ
「単純」か否か,という問題と認識しています.

私は心理学畑の人間ではありませんが,述語でない,一般的な(定義があいまいな)
意味での「アンケート」の集計・分析に携わっています.私の扱う調査における測定
対象は,人間の意識(用語の定義等は分からないで使っています)です.これは,質
問に対する回答として測定されますが,問題なのは,これが一体どういった要因に対
する反応なのか,という点です.ある問そのもののみを要因として回答が決定されて
いるのかどうか,という点です.

問と回答者が同一でも,必ずしも回答は同一でない,ということですが,私はこれを
もって「不変性」がない,とは考えません.測定される回答を決定する要因が,問と
回答者という2要因では完全でない,と考えます.「回答者が同一」といっても,そ
の人自身であるか以上の情報はありません.例えば,その人が問に対してどのような
態度で望もうとしているかは,「測定していません」.

つまり,問題なのは,刺激に対する反応が一定でないと言う点ではなく,反応の要因
となる刺激の全貌が分からない,もしくは分かっても,事実上完全な測定は不能だ,
という点にあると思います.(長いので,刺激に対する反応の変化についての測定
(年齢効果や世代効果など)の為の追試の有用性は割愛します)

こうした考え方に立つと,「追試」は,結果の一般化の可能性の測定に役立つ,と考
えられると思います.

但,こうした立場に立つかは,個々人の価値観なのでしょうが.

草々

| FROM : 出口慎二
| mailto : s_deg (at) fsinet.or.jp




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