南風原@東大教育心理です。 Takashi TSUZUKI さんは書きました: > > 社会心理学関係の論文では,調査データに分散分析を用いたものをしばしば目にしま > すが,統計学的に問題はないのでしょうか(特に,実験と比較したサンプル数の多さ 実験と比べてサンプルサイズが大きくなること自体は,分散分析を適用する上で 特に問題にはならないと思います。また,回帰分析やパス解析,共分散構造分析 での検定が統計学的に問題がないとしたら,分散分析だけが問題になる理由はな いと思います。 御質問の内容からは少し脱線しますが,杉澤武俊「教育心理学研究における統計 的検定の検定力」(教心研,1999年)によると,教心研の過去5年分の論文では 調査研究のサンプルサイズは実験研究の3倍以上で,分散説明率であらわした「 効果量」は,逆に実験研究のほうが 1.5倍ぐらい大きいそうです。全体として 効果量の小さめの研究ではサンプルサイズを大きめにとっていて,効果量とサン プルサイズとの間にかなりはっきりした負の相関がみられます。 検定で有意になるかどうかは,効果量とサンプルサイズの積で決まりますから, 研究者が有意な結果が出るようにサンプルサイズを決めているとしたら,効果量 とサンプルサイズの間には負の相関が予想されます。したがって,杉澤論文で得 られた結果は,研究者が,上記のような,いわば「直観的検定力分析」をしてい るという仮説と矛盾しないものと言えます。あるいは,研究者は何の根拠もなく サンプルサイズを決めているが,たまたまそれと効果量との積が十分大きく,有 意な結果となったものだけが選ばれてジャーナルに掲載されている,という仮説 も考えられます。 ---- 南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp 電話:03-5841-3920 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院教育学研究科
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