[fpr 1680] 教育心理学年報の柳井先生の論文について

豊田秀樹

豊田@早大心理です

元論文の
 (確証度の予測値)= 0.77**(類似度)+ 0.06(被覆度)
という情報だけ利用すると,構造方程式モデルの観点からは

モデルA(「被覆度」は原因変数でない)
「類似度」ー>「確証度」

モデルB(「被覆度」は原因変数でない)
「類似度」ー>「確証度」かつ「類似度」ー>「被覆度」

モデルC(「被覆度」は原因変数である)
「被覆度」ー>「類似度」ー>「確証度」

という3つの可能性が残ります.柳井氏はこの状況で「被験
者が確証度の判断に類似度を利用している場合には,被覆度
の利用は確証度の予測を高めるものとはならない」と解釈し
ています.この解釈は,著者の説明が不十分であったにも関
わらず,上記3つのどのモデルでもなり立つ極めて配慮の行
き届いた解釈であり,

Shin-ichi Ichikawa さんは書きました:
>穏当で別に問題ない

は,明らかに柳井解釈の過小評価です.言い換えるなら著者
の用意した元論文の記述から導けることはこれで精一杯です.

論文中で類似度と被覆度の関係を述べることは本質的に重要
です.何故ならばその相関が実質的に0であればモデルBと
モデルCは,その時点で消え去り,相当程度純粋に統計学的
に(実質科学的知見を駆使せずに)「「被覆度」は原因変数
でない」という結論を平坦に導けます.

一方,類似度と被覆度の相関が実質的に0でない場合は(こ
ちらが真実だったのですが)モデルAだけ消え去り,「「被
覆度」は原因変数であるのかないのか」が統計的には決着が
つかない状態のみが残り,実質科学的考察にたよる茨の道が
始まることになります(これはこれで重要です).元論文は
直ぐに決着する平坦な道か,あるいは茨の道かの最初の分岐
点すら示さない解釈をしてしまったということです.統計に
詳しい読み手は,まずその分岐点を知りたいので,稚拙な印
象は免れません.

Shin-ichi Ichikawa さんは書きました:
上記の柳井先生の記述は「誤り」であるとはっきり言
うべきだと思います。

類似度と確証度の単相関係数が有意な相関を持たない場合を
除いては(統計的にはユニークに定まらないというという意
味で)誤りである.と解釈すれば,柳井氏の評価が「誤り」
であるとは言えないというのが小生のメタ評価です.

「「誤り」という評価は「誤り」か否か」というメタ評価
は「誤り」という言葉を柳井氏がどう定義していかに依存し
ています(「天皇を中心」「神の国」の真意・定義は総理し
か分からないのといっしょです).

Shin-ichi Ichikawa さんは書きました:
はっきり言う

ことは,オーディエンスには無理ですので,直談判なさる
ことをお勧めします.

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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) mn.waseda.ac.jp  1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
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