[fpr 1713] t検定の使い方について

Hiroyuki SUZUKI

鈴木@朝日新聞社です。
わかる範囲でお答えします。


>「t検定の結果、両群間の就労意欲レベルには有意な差が認められなかった・・・
> この結果から、同一組織における就労継続女性と転職した女性の就労意欲レベル
> には差がないことが判明し、仮説7が支持された」

原論文を読んでいないのでこのケースに統計的検定を適用する是非は判断できません
が、上記の文章の展開には違和感を覚えます。

統計的検定では、帰無仮説を棄却するにしろしないにしろ、その判断が誤りである可
能性は捨てきれません。棄却しないということは「データから判断する限りでは、母
集団において差がないという帰無仮説を否定することは出来ない」と判断したことに
なります。

従って、有意な差が見られなかったからといって「差がないことが判明し」たわけで
もないし、積極的に差がないという仮説が支持されたわけではありません。第2種の
誤りである可能性はもちろんあります。


> これは帰無仮説採択の検定であり

「帰無仮説採択の検定」という用語が適当かどうかはわかりませんが、「帰無仮説の
もとで、実際に起きたことの生じる確率(P値)の大きさを検討する」という検定は
不自然ではありません。区間推定の裏返しです。


おっしゃっていることは、どちらが正しいかという視点からは判断できないことだと
思います。t検定を適用することに無理がないとしても、検定結果は必ず誤りである
可能性を含みます。ただ、統計学の方法は、なるべく誤りである可能性が少ないよう
に体系つけられたものですから、誤差が捨てきれない以上、統計的検定を判断の一基
準とすることに問題はないでしょう。


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