市川@東京外国語大学です. 堀さんの投稿したメールを読んでいたら私の名前が フルネームで出ていたので思わず読み直しました. (よく考えてみたら,このメーリングリストでは, 「市川さん」といえば市川伸一さん@東大なのですね.) 柳井・高木編「多変量解析ハンドブック」の第7章 「因子分析」は随分と前に書いたものです. しかし,だからといって,著者の責任が消滅するものでも ないですので,記憶を手繰り寄せながら返答します. 単純構造について,因子構造行列も含めるのは, 堀さんが指摘するとおり,不適当でしょう. これは,この本を書いたころの市川雅教さんが 斜交回転にあまり意義を認めておらず, 直交回転を念頭に置いていたためだと思います. サーストンの単純構造の条件についてですが, Anderson & Rubin (1956 p.122) は Thurstone (1947) の 5つの条件を紹介していますが,2番目の条件については It should be pointed out that the desired linear independence is impossible because these rows have zero elements in a given column out of m columns and hence the submatirix of these rows can have maximum rank of m-1. と不適切であることを指摘しています. ただし,この2番目の条件が,日本語の本で落とされている 条件に対応しているのかどうかは,現在手元に資料が ないので分かりません. いずれにしても,Thurstone の5条件は,単純構造の 定義としては不十分であり,今日では, 「サーストンはこう言った」という歴史的な意義を 持つのみと考えます.
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