[fpr 1758] 因子分析の単純構造(長文)

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

市川さん@東京外国語大学 返事をありがとうございます。

> 堀さんの投稿したメールを読んでいたら私の名前が
> フルネームで出ていたので思わず読み直しました.

どうも失礼しました。本の中の1章でもあったので,フルネームにさせていた
だきました。

> これは,この本を書いたころの市川雅教さんが
> 斜交回転にあまり意義を認めておらず,
> 直交回転を念頭に置いていたためだと思います.

そういうことでしたか。時代は移るということですね。
私なんかは大幅に変わってしまって,それが因子分析を見直してみようという
ことでいろいろ読んでみているところです。

> 
> サーストンの単純構造の条件についてですが,
> Anderson & Rubin (1956 p.122) は Thurstone (1947) の
> 5つの条件を紹介していますが,2番目の条件については
> 
> It should be pointed out that the desired linear 
> independence is impossible because these rows have 
> zero elements in a given column out of m columns 
> and hence the submatirix of these rows can have 
> maximum rank of m-1. 

Anderson, T.W., & Rubin, H. (1956). Statistical inference in factor 
analysis. Proceedings of the Third Berkeley Symposium on Mathematical 
Statistics and Probability, 5, 111-150.

ですね。未見ですので,さっそく対外複写依頼をだしました。

これって絶対に成立するのでしょうか? 
例えば,10変量で2因子の場合でもかならずランクが1になりますか?さら
にいえば斜交回転でこれが必ず言えるのでしょうか?

逆に考えれば,ランク落ちするなら因子の抽出のしすぎの可能性があるので
は?
 
> ただし,この2番目の条件が,日本語の本で落とされている
> 条件に対応しているのかどうかは,現在手元に資料が
> ないので分かりません.

2の条件は落とされていないですね。
(a)柳井・繁桝・前川・市川『因子分析』朝倉書店 1990 p96

>このような因子の典型例は,Thurstone の定義による単純構造(simple 
>structure) にみられる。彼の単純構造のとは次の四つの条件,すなわち,
>(i) 因子負荷量行列Λの各行は少なくとも一つの0の要素を持つ。
>(ii) 共通因子数をm とすると,各列は少なくとも m個の0を要素として持つ。
>(iii)Λの任意の2列において,一方の列にのみ含まれ,他方の列にふくまれ
>ないような若干個の変数がある。
>(iv) 4個以上の共通因子を有する場合,Λの任意の2列に関し,大半の変数
>を共有せず,ごく僅少の変数のみ共有する。

(b)柳井・高根『新版多変量解析法』朝倉書店 1985 p132-133
> サーストン(1947)は,得られた因子が,各変数に内在すると見られる潜在因
>子を反映するためには,得られた因子構造が単純構造(simple structure) と
>呼ばれる次の4つの条件を満たすことが必要であると考えた。

>(1)共通因子数をr とすると,各列は少なくともr個の0を要素として持つ(こ
>の場合は0にほぼ近い値ということを意味する)
>(2)因子構造行列Aの各行は少なくとも1つは0を要素として持つ。
>(3)Aの任意の列において,一方の列にのみ含まれ,他方の列には含まれない
>ような若干の変数が存在する。
>(4)4個以上の共通因子が存在する場合,Aは任意の2列に関し,大半の変数
>を共有せず,ごく少数の変数のみを共有する。

Thurstone(1947) p335 r は因子数
1) Each row of the oblique factor matrix V should have at least one 
zero.

2) For each column p of the factor matrix V there should be a distinct 
se of r linearly independent tests whose factor loadings vjp are zero.

3) For every pair of columns of V there should be several tests whose 
entries vjp vanish in one column but not in the other.

4) For every pair of columns of V, a large proportion of the tests 
should have zero entries in both columns. This applies to factor 
problems with four or five or more common factors.

5) For every pair of columns there should preferably be only a small 
number of tests with non-vanishing entries in both columns. 

ですから,Thurstone(1947)の2は(a)の(ii), (b)の(1)に対応しています。で
すから,2の基準は落とされていません。そういえば,Thurstone などでは 
Criterion といっているのを「条件」といっているのも気にかかります。「条
件」なら「必要条件」「十分条件」のような意味合いをもっているでしょう
が,「criterion」だと絶対満たさないといけないということはなくなる。単に
判断の材料。

> いずれにしても,Thurstone の5条件は,単純構造の
> 定義としては不十分であり,今日では,
> 「サーストンはこう言った」という歴史的な意義を
> 持つのみと考えます.

う〜ん。厳密に5基準を満たさなければいけないという考えならたしかにそう
でしょうが,5つの基準のうちいくつかを満たすようにすると考えるなら今日
でも意義があるのでは。

たしかに,Comrey & Lee(1992). A first course in factor analysis (2nd 
ed.). LEA 

なんかでも Thurstone の基準はけちょんけちょんですが,歴史的意義しかない
というような捉え方の本は管見ではありません。

日心のワークショップでは(a)の本を3章を大いに利用させてもらいます。それ
とこの本のデータも利用させてもらいます。よろしく。

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