[fpr 1773] SEMの固定母数について

南風原朝和

fprの皆様:

南風原@東大教育心理です。

Yusuke Sumita さんからの引用:

> 現在、構造方程式モデルを利用した分析を行っているのですが、
> ある問題にぶつかり、みなさまのお力をお借りしたいと考えております。
> 
> -----
> 構成概念を一つの観測変数でしか測定できなかったため、
> 一指標条件により観測変数の誤差分散を信頼性係数を利用して固定したいと
> 考えております。
> しかし、観測変数が一つしかない場合の信頼性係数の推定方法がわかりません。
> 標本をランダムに2つに分け、2度測定したとみなして信頼性係数を求めるのか、
> それとも何か別の方法があるのか、是非とも教えていただきたいです。

信頼性は基本的に,「測定値=真値+誤差」と考え,「同一個人に対する
複数個の測定値の真値は共通で,誤差のみが異なる」とみなして,同一個
人に対する複数個の測定値の間の一貫性によって推定するものです。

何を誤差とみなし(たとえば,時間的変動,評定者間変動,項目間変動な
ど),したがって何を真値とみなしてモデルを構成するのか,によって最
適な信頼性推定法が異なってくるのだと思いますが,個人につき1個の測
定値があるだけでは,原理的に言って,誤差の大きさの程度を推定するこ
とはできません。

たとえば時間的変動を誤差とみなし,時間的安定性としての信頼性を推定
したいというのであれば,モデル検証のための本調査とは別に,再テスト
法による信頼性推定のための調査が必要になるかと思います。

ただ,こうした調査によって推定された信頼性も統計量にすぎませんから,
標本が小さいときには,あまりあてになりません。また,仮に他の研究で
信頼性が報告されていたとしても,母集団が違えばそれもまた,あまりあ
てにならないかもしれません。

こう考えると,信頼性係数として適当な数値(best guess)を入れてみて
分析してみるというのも許されるのではないかと思えてきますが,どうで
しょうか。“リーズナブルな範囲”でその数値を変化させてみたとき,分
析結果は大きく変わりますか?

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp  Tel/Fax:03-5841-3920
東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)


  

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