[fpr 1797] きゃーるが鳴くんで

豊田秀樹

豊田@早大です

Tomokazu HAEBARA さんは書きました:
>「変数を統制する」という言葉が,「それらの変数について
>特定の値に固定する」という操作に限定されて使われている
>ようですが,

「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく
初歩の統計の本」の中でもっとも頻繁に取り上げられてい
たからです.また吉田さんからの質問に直接答えたかった
からです.

>実験研究では,「主眼となる独立変数(要因)
>の各水準に被験者をランダムに割り付けることによって,そ
>れ以外の変数の影響を除去する」という形の統制のほうがよ
>く使われていると思います。この場合,それら多くの変数が
>複雑に相関したままの観察研究より,因果関係の推論に関し
>ては有利な状況が作られると考えてよいのではないですか。

ランダム割り付けは,実験に使用した正にその標本についての
考察です.別の標本に関しては,厳密には知見を何も導きません.
しかも心理学研究の場合にはそれが杞憂でないことが多いのです.
それでは以下のように加筆しましょう.

(1)観察(相関)研究は因果関係を確認するには不十分である.
因果に迫るためには第3の変数の影響は実質科学的
に考察しなければならない.

(2)統制研究は因果関係を確認するには不十分である.
因果に迫るためには統制した変数の実験しない水準
の影響は実質科学的に考察しなければならない.

(3)ランダム割り付けは因果関係を確認するには不十分である.
因果に迫るためには,実験に参加しなかった被験者
で成立つかを実質科学的に考察しなければならない.


因果関係の確認に関して,観察(相関)研究の欠点を特別に
強調して説明するのは初心者教育として間違っています.決
まり文句としての手垢のついたステレオタイプをコピー・流
布しているだけです.

因果関係を確認するには統計的方法だけでは不十分である,
ことを,まず教えて,色々な方法の長所と短所をバランスよ
く論じるべきです.相関も統制もランダム割り付けも因果関
係に迫るための,それだけでは不十分な役割の違った道具・
武器なのです.

PS 無作為化も役割の違った道具・武器の1つです.

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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) mn.waseda.ac.jp  1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
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