繁桝@駒場東大です。 堀さんのメールで名前が出たので,重い腰を上げて、私の因子分析観を書きます. 主成分分析は,(複雑ではあるが),手許にあるデータの記述統計的な方法である.手 元にある(錯綜しているように見える)多変量データを,我々が情報処理しやすいよ うに次元縮約し(2次元や3次元が望ましいと思う),そこから(主観的であってもい いので)規則性 (パタン)を読み取るための手法である. 因子分析は,手許にあるデータ以外にも通用するように,潜在変数を使った構造部 分の確定と分布仮定をもつ統計モデルに基づくmodel based analysisである.そう である以上,識別性のないモデル(回転の不確定性を含めて)に関して推論するのは 本道ではなく,母数の一部を特定する制約条件など、あるいは事前分布によるやわ らかい制約によって,モデル全体を識別性があるようにして,最大尤度法,あるいは, ベイズ法で解く事が正当である. モデルに基づくため,手許にあるデータと交換可能なデータ一般について,母数の 不確定性,モデルの不確定性などを推論することができる.また,最小二乗法の系統 が,分布仮定に関して,どれほど頑健であるか,あるいは,どれほど,最大尤度法に比 較し簡便になるかなどを論ずることができる. 以上のようなのが私の理解です.モデルを使う以上,因子分析は,探索的よりも確認 的,共分散構造分析的な使い方がむしろ基本ではないかと思います.その点で今度 の堀さんの講演が,どのような切り口で,因子分析の探索的使い方を論じられるの か楽しみです. ”実践としての統計学”の佐伯先生の章については,数値例を私はチェックしてい ませんでした.この本の分担者としてすみません.因子分析に関する見方は佐伯先 生とわたしでは若干違いがあるようです.
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