堀@香川大学経済学部です。 (1)SEM の初心者用の本などの講評をした Steiger, J.H. (2001), "Driving Fast In Reverse", Journal of the American Statistical Association, March 2001, Vol. 96, No. 453, pages 331-338 が次のサイトにおかれています。 ftp://aep150666.psych.ubc.ca/JASA/driving.pdf どんな本についてコメントしているかは http://bama.ua.edu/cgi-bin/wa?A2=ind0106&L=semnet&F=&S=&P=30929 http://bama.ua.edu/cgi-bin/wa?A2=ind0106&L=semnet&F=&S=&P=35449 Steiger 自身のコメントは次のところに http://bama.ua.edu/cgi-bin/wa?A2=ind0106&L=semnet&F=&S=&P=33498 http://bama.ua.edu/cgi-bin/wa?A2=ind0106&L=semnet&F=&S=&P=42586 入門書は Kline(1998)、Kelloway, E. (1998)、 Maruyama, G. M. (1998)についてです。 入門書を書くよりも批評する方が簡単だとことわりつつ、ビシバシいってます。Maruyama について は間違いを何カ所も指摘しています。 でもって、SEMを教えるものはBollen, K. A. (1989)を読みこなさなくてはいけないよ。Bollen を読 まないものは教える資格なし。 と厳しいというか当然のお言葉。初心者であってもSEMのユーザとして心得るべき点を最初のところ に指摘しています。 相関行列を処理するプログラムはSteiger SePATH 以外にあったのかな?そのためにStatistica を 買ったのだ。 Steiger は上の3つの入門書のうちではKline を薦めている。 (2)う〜ん。SEMもポピュラーになってきたので、とんでも本が出だしたと言うことか。 そういえば、日本の因子分析の本にもとんでも本がでてますね。 鈴木さんがすでに指摘している。[fpr 1953] http://www.nuis.ac.jp/~mat/fpr/fpr2001/0064.html SUZUKI Tokuhisa wrote on Thu, 19 Apr 2001 22:24:54 +0900 > 三土「数学の要らない因子分析入門」の,因子パタンをまた因子分析するという応用 > も初心者には奇異ですよ, この本では因子負荷量の大きい変数を無視するということもやってます(p170)。 とんでも学会が公認してくれるのではないでしょうか? まさに単に因子分析を使ったことのある人が因子分析の本を書いてしまった。 (3)そういう意味では、前に指摘した >佐伯胖・松原望編『実践としての統計学』東京大学出版会, 2000 >2章 データを読む 相関分析,主成分分析,因子分析の意味をさぐる >特にp87-p95 のp98-100 であるが、 因子分析ではなく主成分分析である点は前の指摘と同じである。そして、p99表 2.9であるが、バリ マックス回転はしていない。お〜。なんということ。しかも、数値がちょっと違う。表2.7、2. 8のほうが違うのかもしれないが、こちらを正しいとすると、初期解は、(v1 算数、v2 理科, v3 国 語, v4 総合) FACTOR1 FACTOR2 V1 0.94490 -0.32654 V2 0.97961 -0.19699 V3 0.96082 0.27523 V4 0.24453 0.96953 となる。(SAS 6.12)。 varimax 解は Rotated Factor Pattern FACTOR1 FACTOR2 V1 0.99455 -0.10165 V2 0.99869 0.03240 V3 0.87235 0.48779 V4 0.01618 0.99976 となる。Oh my God! 「総合学習」を加えたらまったく異質の2因子といっている。しかしバリマッ クス回転解では算数、理科の因子は安定して現れている。 さらにこの分析は、因子分析の視点からするとまったく奇異なものである。1項目しかないものが独 立の因子として認められるのか。探索的因子分析では一項目が加わってその項目が独立の一因子とな るとはね。主成分分析だからでるものである。4変数のデータは2因子を求めることができないか ら、2因子を求める因子分析はしない(2因子を求めるなら5変数は必要である)。このレベルの話 はThurstone(1947)ですでに指摘されているレベルである。さらにもう一度言っておくと、バリマッ クス変換したと嘘かなにも知らないかのどちらかと思える言及をp100にしている。 いずれにしても、主成分分析と因子分析の違いをわかっていないから、このような分析をあたかも正 しい因子分析のように言ってしまうのだ。 これはとんでも本の部類になるでしょうね。 (4)斜交因子の解釈 斜交因子の解釈のときに、因子パタンか因子構造かとかいうことがときどき話題になる。 Grice, James W A comparison of factor scores under conditions of factor obliquity. Psychological Methods. 2001 Mar Vol 6(1) 67-83 はそんな問題に対する一つの解だろう。 1.因子得点を求める重みづけ 2.〃を1,0,-1にした場合、 3.因子パタンを1,0,-1にした場合 4.因子構造を1,0,-1とした場合。 5.因子パタンの独自のものを1,-1とし他のものを0 6.因子構造の独自のものを1,-1とし他のものを0 とした場合において、いくつかの指標を使って、よい因子得点となるかチェックしている。 正しい因子得点との関係やその他の指標から、2を一番いいものにしている。が、4がほかの方法と 比較してはっきりはずれていて悪い。これを見ると、因子構造を解釈するのはあまり意味のあること ではなさそうだ。やはり因子パタンを一番利用すべきであろう。結果として相関がある変数を考慮す る必要性はないだろう。 ま、大胆に言うとということ。おっと、と学会からチェックが入るか。 (5)Browne の論文とCEFA 今、探索的因子分析最強のCEFA。一応いっておくとSASにはCEFA にない方法も含まれています。 CEFA の良さというか分析についてBrowne(2001) がいい解説を書いてます。 詳しくは、 http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki9.html#100 に。 この論文において、Thurstone の単純構造の条件について詳しく書いてます。何を単純構造にするか はやはりThurstone に戻ります。そこからどう数式化するかです。過去のものとはいえない。 直接 obliminについてもちょっと書いてます。Harman が書いたんだ。 (7)not positive definite について、いろんなソフトの対応が違ってます。まともなデータではこの問題は起こらない。しか し、日本語のSD法の元データ(相関行列)にあたると、最後の固有値が負(0といってもいいかも しれない)になってしまう。このときどう扱うのかな。 各ソフトの対応について、 http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki10.html#101 http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki10.html#102 http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki10.html#103 一度にアクセスするなら http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki10.html ま、一度にデータを集めることができない時の対応ですね。みなさんはどうしますか。 ps.なんか探索的因子分析のとんでも論文を書きたくなったな。 ---- 堀 啓造(香川大学経済学部)e-mail: hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp home page http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/ 電話番号 087-832-1894(直通) fax 087-832-1820(事務室) 〒760-8523(これで香川大学経済学部) 香川県高松市幸町2−1 香川大学経済学部
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