fprの皆様
服部@筑波大学・心理学系です。
少々長い(160行くらい)です。佐久間さんのデータで要素(母、先生など)
を、豊田さんが紹介されたISMを使って階層構造化してみたらHICLASの結果と同
じになった、という内容です。
>お茶の水女子大学人間文化研究科の佐久間路子と申します。
>実際には、具体的な他者(例えば、母、先生、親友、恋人、先輩)と一緒にい
>るときの自己について、形容詞をあげてもらい、他者×形容詞のマトリックス
>を作成し、当てはまる場合は1、当てはまらない場合は0と評定させます。
>
>マトリックスの例
> やさしい 明るい おしゃべり 神経質 わがまま
>with 母 1 1 1 1 1
>with 先生 1 1 0 1 0
>with 親友 1 1 0 0 0
>with 恋人 1 0 1 0 1
>with 先輩 1 0 0 1 0
>
>この評定をもとに他者と一緒にいるときの自己を階層構造で示します。
>
>結果の例(上位と下位は包含関係にある)
> with 母
> | |
> with 先生 with 恋人
> | |
> with 親友 with 先輩
佐久間さんの例題では、
>with 先輩 1 0 0 1 0
となっていますが、その下の階層構造には
>
>結果の例(上位と下位は包含関係にある)
> with 母
> | |
> with 先生 with 恋人
> | |
> with 親友 with 先輩
とあります。この図の包含関係からもとのデータを推察すると、おそらく
with 先輩 1 0 1 0 0
^ ^
ではないかと思います。(私が誤解しているかもしれません。)
>豊田秀樹@早稲田心理です
>それから佐藤隆博先生の
>1987年10月 ■佐藤 隆博著 ■A5 208頁 ■2301円(税別)
>ISM構造学習法 明治図書
>にISM法という以下のようなデータから教材を系列化する手法があり,似たような
>構造を描くことができます.
>
> 足し算 繰り上り 2ケタ足し算...
>問1 〇 × 〇
>問2 〇 〇 ×
>問3 〇 〇 ×
>問4 〇 × ×
>.
>.
豊田さんが紹介されているISM(Interpretive Structural Modeling)は、要
素(ここでは母、先生、親友、恋人、先輩)どうしの対比較情報を用いて、要素
全体の階層構造を表現することができます。
ISMを使うには(最新の研究は知りませんが)、まず、要素間の対比較を行い
ます。ここでは、佐久間さんのデータに基づいて、パターン(先輩については
10100としておきます)を行間比較して、対比較データを作ってみます。例え
ば、母は11111となっていますので、他の要素のパターンは全て母のパターンに
含まれます。また、親友は11000ですから、母の11111に加え、先生の11010にも
含まれます(親友で1となっている形容詞はすべて、母と先生では1になっていま
す)。
このようにして全ての要素間で包含関係を一覧表にすると、以下のようになり
ます。この行列(Adjacency matrix)で1が入っている要素ijは、i行の要素がj
列の要素に含まれる(もともとは可達と呼んでいる?)ことを示します。
Adjacency matrix
--------------------------------------
j
-----------------------------
1 2 3 4 5
i 母 先生 親友 恋人 先輩
--------------------------------------
1 母 0 0 0 0 0
2 先生 1 0 0 0 0
3 親友 1 1 0 0 0
4 恋人 1 0 0 0 0
5 先輩 1 0 0 1 0
--------------------------------------
この行列を使ってISMを実行すると、以下のような結果になります。(計算に
は自作ソフトを使いましたが、この例題では繰り返し計算は要りませんから、ソ
フトも不要でしょう。)
Reachability matrix (Iterations= 1)(行の要素iが列の要素jに到達すると
き、行列の当該の要素ijに1が入っています)
1 2 3 4 5
-------------------
1 | 1 0 0 0 0
2 | 1 1 0 0 0
3 | 1 1 1 0 0
4 | 1 0 0 1 0
5 | 1 0 0 1 1
==================================
Level : 1
Element(s) = 1(最上位(水準1)の要素)
==================================
Level : 2
Element(s) = 2(第2水準の要素)
Reachable element(s) >> 1(要素2が到達できる要素の番号)
Element(s) = 4(これも第2水準の要素)
Reachable element(s) >> 1(要素4が到達できる要素の番号)
==================================
Level : 3
Element(s) = 3(第3水準の要素)
Reachable element(s) >> 1 2(要素3が到達できる要素の番号)
Element(s) = 5
Reachable element(s) >> 1 4(要素5が到達できる要素の番号)
==================================
上のかっこ内の記述に「到達できる」とありますが、ここでは「包含される」
ことに相当します。なお、到達する要素には、直接到達するものと(例えば、要
素3は要素2へ直に到達します)、他の要素を介して間接的に到達するものとがあ
ります(例えば、要素3は要素2を介して要素1に到達します)。
上の出力結果を用いて要素の関係を階層構造にして示すと(要素を佐久間さん
に倣って|記号で結ぶと)
水準1 -> with 母(1)
| |
水準2 -> with 先生(2) with 恋人(4)
| |
水準3 -> with 親友(3) with 先輩(5)
となり、佐久間さんが示されたHICLASの階層構造と一致します。
それでは、失礼します。
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筑波大学 心理学系 服部 環
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