[fpr 2272] 4・5項目で1つのIRTの尺度

SHIBAYAMA Tadashi

柴山@新潟大学です。

匿名審査が基本であるにもかかわらず、審査者がどなたで審査対象と
なっている論文の内容が形式的にせよ少しわかる状況の中で、公のメ
ーリングリストで発言するのは、投稿された方にまことに申し訳ない
なと思いながら、心理学的研究の方法論上とても重要なことだと考え、
あえて発言を続けさせていただきます。

数年前このメーリングリストでも、みなさんがかなり活発に議論され
ておられたようですので、あるいはそのときに話題になっていたのか
も知れませんが、因子分析の使い方についてです。

豊田さんのメールにあります、

>20因子抽出して,その中には3項目で1尺度というものが5つ

の部分ですが、まず因子分析モデルを研究に使うなら、関心下の現象
に対していわば仮説的な因子構造を想定し各因子(下位尺度)に相応し
い変量(項目)を準備する作業が必要です。この作業をかなり入念にし
ておかないと、結果として上記のようなことがまま起こります。その
意味で因子分析を使うということと研究対象をいかにみるかというこ
とは表裏一体の関係にあるのではないでしょうか。

次に因子分析を実際に利用する際の注意点ですが、たとえば芝(1979)の
「因子分析法 第2版」第12章「因子分析を応用するときの注意」などを
みますと、「変量の数なら60どまり、因子の数なら10どまりくらいが一つ
の目安ではないかと思う」(p.226)という指摘があります。経験則ではあり
ますが、この「目安」は実用上かなり妥当な目安のように感じています。

また、コムリー(1979)「因子分析入門」サイエンス社の「8.4 因子分析の
利用に際しての誤り」には、「Guilford(1952) When not to factor
analyze,Psychological Bulletin,49,26-37の指摘が大部分ではあるが」
と断り書きした後で、さまざまな要点がリストアップされています。その中に
「標識変量(因子負荷の高い変量)が一つの因子に5個以上持っているのが良い」、
また別の個所では「因子分析に使われる変量の総数としては、予想される因子数
の少なくとも5倍かあるいは6倍あることが望ましい」旨の指摘がなされていま
す。これもまた経験的に「その通り」と納得できるものです。

ところが、豊田さんがfpr2269で少し触れられているように、また私もfpr2270
で述べましたように、変量数3くらいで因子を構成したりする研究例が時々見ら
れます。これは一つに因子分析のテキストであげられている例が、説明の都合上、
少数個の変量からなるものが多く、それをみた研究者がそのまま分析に使ったり
するからかなと考えたりします。実際、私も講義の中では変量8で2因子を求める
ケースを例に因子分析の説明をしています。しかし、研究上はやはりそれでは
まずいのではないでしょうか。それから、これは豊田さんや狩野さんへの質問なの
ですが、共分散構造分析においても同様の配慮が必要だと思うのですが、いかが
でしょうか。

以上、ちょっともとの話題からそれましたが、便乗質問を兼ねてご参考までに。

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