出口と申します.仕事上,若干各種「調査」や「調査」データにかかわる ことのある者です. 芳賀先生投稿の趣旨は,「調査」という言葉が,広義の場合と狭義の場合あり, 広義の場合,「実験調査」などとも言えるのに, 狭義の場合,「実験」vs「調査」のように相対するものとして使われる という点についてどう思うか,また, 「実験」と狭義の「調査」はどう区別して定義されるべきと考えるか ということと了解し,以下,私見です. 言われてみますと,確かに,狭義の「調査」は,他にふさわしい言葉が ある方が良い気がします. ただし, >要因統制が行われるのが「実験」と定義することは良いとして, >要因統制が行われないのが「調査」と定義して良いものでしょうか? >要因統制が行われないのは,観察と定義し, >実験 v.s. 観察 というようには考えません.そうではなく, >ランダムサンプリング(による外的妥当性の保障)と >ランダマイゼーション(による内的妥当性の保障)も こちらのほう,という感覚を持っています. 両方の妥当性を満たすような調査設計(この「調査」は広義ですね...) が可能なのは確かですが,私の持っている感覚(語感?)では, こちらのほう,一般化の方向で定義されるべきと考えます. 私が,要因統制という観点での線引きに違和感を感じる例としては, 例えば,世論調査のように,日本の有権者のうち,現内閣を支持して いる人の割合を知りたい,という目的で行う調査をあげられるかと 思います. あるいは,ある選挙区で,誰が当選するかを知りたいという目的で, その選挙区の有権者(で投票に行く人)のうち,最も多くの人の 支持を受けているのはどの候補者かを調べようと行う,選挙予測の ための調査などもあげられるかと思います. こうした調査では,「要因統制」という発想はかみ合わないのでは ないかと思いますがいかがでしょうか. #だからと言って,その場合,芳賀先生の言われている「観察」に代わる 言葉は思いあたらないのですが.... #因みに,日本の「the」の付くべき狭義の「世論調査」と,特に深く 考えず一般名詞のつもりで使う,ただ,みんなが何考えているのか 聞いてみましょうという程度で使う"世論調査"も,何か違う言葉に してもらえたらなあと常々感じています.(心理学には関係ありませんが...) --- 出口慎二(deguchi shinji)
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