[fpr 2381] 調査と実験

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

調査と実験・・・研究法では基本中の基本の概念なのに,なかなか難しいで
すね。

2変数間の関係について調べるという文脈では,ある変数(独立変数)を
研究者の側で意図的に操作して,それが従属変数にどう反映されるかを見
るのが「実験研究」で,そういう操作なしに,両変数を測定して関係を見
るのが「調査研究」ですね。後者は「相関研究」あるいは「観察研究」と
も呼ばれています。

ここでは,独立変数の「操作」の有無がポイントです。操作のあるタイプ
の研究を「実験」と呼び,ないタイプの研究を「非実験」と呼べば,とり
あえずすっきりしますが,後者を「非・・」という形ではない別の名称で
呼ぼうとすると,上記のようにいろいろと出てくるということでしょう。

次に,実験的操作がある場合でもない場合でも,具体的なデータ収集法
(測定法)は様々です。その種類として,質問紙「調査」,聞き取り「調
査」(面接),行動「観察」,種々の検査等があり,そこでも「調査」や
「観察」という言葉が出てくるので,やっかいです。つまり,実験的操作
の有無という研究の基本的なタイプとでもいうべき次元での分類と,測定
の仕方という次元での分類の両方に,同じ名前が出てくるところが困り者
なのです。

変数の測定において,実験研究の場合は検査が用いられ,調査研究の場合
は質問紙等による調査が用いられる,と決まっているならまだ話は簡単な
のですが,実験研究でも従属変数の測定に質問紙を用いたり行動観察を
行ったりというのはごく一般的なことです。「調査」や「観察」という言
葉をどのレベルの分類を意図して使っているかに注意が必要ということで
すね。

それから,「統制」という手続きがあります。これは実験研究では,操作
した変数の影響を偏りなく取り出すために,つまり他の変数との交絡を避
けるために必要なことです。しかし,変数操作のない調査研究(相関研
究,観察研究)においても,変数の測定の際には,ターゲットとなる個人
特性以外の要因によって測定値が歪んでしまうことのないよう,さまざま
な注意を払います。これも統制の一種です。ということは,「統制」自体
は,実験研究(変数操作を伴うという意味での)だけの特徴ではないとい
うことですね。

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp  Tel/Fax:03-5841-3920
東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)


  

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