正木 様 > > 現在、私の指導学生が児童の攻撃性尺度(基準関連的に作成したもの) > > を用いて介入研究(アサーショントレーニング)に入っています。 > > これは大変興味深い研究です。 > 是非、結果が出た時点でまたご教示ください。 尺度作りの点では鳴門教育大には負けていないと思っていますが、論文になるの はいつか不明です。まあ、修士論文は来年の春ですが。 インデックス作りが一歩目、介入研究が二歩目、ワンステップでの研究は無理で しょう。みんなあまりにも先を急ぎすぎます。前進していない認識がありません。 心理学・医学の関係者のほとんどは論理的方法や因子分析法を利用して尺度を作 ればよいと思っていますが、この方法では妥当性の高い尺度を作るのが困難であ るという認識がないようです。基準関連的尺度構成についてはごく一部の人しか 理解していない印象です。機会があれば出版社をだまして心理尺度の作り方の本 を書く予定ですが、出版不況ですし、予定は未定。 ---妥当性概念に誤解や混乱があり、一ヶ月間、昔読んだ本を再読していました が、やはり外部基準との相関を証明しない限り、構成概念妥当性も成立しないこ とは確かだという確信を持っています。アメリカ心理学会では妥当性は単一の概 念で、妥当化に内容、外部基準、構成概念を用いる方法があるという説明です。 これもよく考えるとインチキ臭く、三つの妥当化の結果が一致するという証明は ありません。妥協の産物でしょう。私は難しいことを考える頭がないので、なん らかの外部基準との関係を定量的に証明しない限り、尺度の妥当性を認めないと いう単純な立場です。 > > 前後比較を実施される場合も、ABA BAB などのクロスオーバー法 > を用いて、ベースラインとの比較に加え、群間での比較ができる > デザインとすれば、有益な情報がより多く得られるかと思います。 > やや手間はかかりますが、自然経過による経時的バイアスを考慮 > したうえで、ある程度の群間比較は可能かと思います。 現在はAB計画で、対照群は別の担任に依頼中、データは取れる見込みですが、ベ ースラインが一致して対照群と認められるかは不明です。まあ、経時変化を比較 するだけです。やらないよりはましでしょう。 > > 保健医療分野においても、たまたま集められたサンプルに対し、 > 何らかの指標の変動をみて、一律 1% や 5% の危険率で検定し > 一喜一憂!?しているような報告もまだ多くみられます。 昨年、やむをえずストレス研究に巻き込まれ、職場のストレス判定図なるものを 勉強したのですが、保健医療分野のインデックスの作り方には問題を感じました。 基準関連妥当性はほとんどないのではないかと思いました。どこを探しても妥当 性を証明するデータが出てきません。ものすごい研究費と労力が投入されている のに、我々の調査では病欠日数との相関は0.1少しでした。心理学的に作ったス トレス尺度は0.2以上の相関がありました。もちろん、病欠日数がストレスの正 しいインデックスであるかは不明ですが。---いずれにせよ、こんな値では少な くとも欠勤日数の予測力はゼロと見なすべきで、失敗した研究です。データを再 分析すべきでしょうが、現在、放置しています。いずれ元気がでたら欠勤日数予 測尺度でもと思ってはいますが。 ----- 村上宣寛 (勤務先) 〒930-8555 富山市五福3190 富山大学教育学部学校心理学 TEL/FAX 076-445-6367 E-mail: murakami at edu.toyama-u.ac.jp HomePage:http://psycho01.edu.toyama-u.ac.jp/
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