[fpr 2450] 探索的因子分析におけるMLとOLS

狩野裕

狩野@大阪大学です

学期が始まると授業等々で手が離せずレスできずにいました.

探索的因子分析において,最尤法に比べて最小2乗法のパフォーマンスが
少し良いという事実は認識しています.丘本ー猪原らの一連の論文は,
そのようなことを指摘したものです.丘本(1986,因子分析の基礎.日科技連)
の67-68頁には,彼らの一連の結果がまとめられています.

因子分析は推定に関してかなり複雑なモデルです.複雑なモデルほど最尤法
という手の込んだ分析手法のパフォーマンスのよさが見えるには大きな標本が
要求されます.つまり,複雑なモデルには,単純な推定方法である最小2乗法が
入り込む余地があるとも言えます.したがって,この論文の結論はこのような
一般論の枠組みに入ると思います.

堀さんが紹介してくれたこの論文では,実際データ(性格検査の例)で
差異が出ることを示しているのが面白いと思います.ただ,たとえば,
反復の初期値を変更すれば最尤法でもそれなりの結果が出る可能性が
あると思います.

因子分析は難しい多変量解析なので,artfactを生み出さないためにも,最尤法
や(一般化)最小2乗法などで分析してみて,どれもが解釈上差異のない結論を
生むということを確認するのがよいと思います.複数の推定方法で分析する
というのは一種の感度分析(sensitivity analysis)にあたると思います.
どの分析手法でも分析結果が変わらないのであれば,de facto として最尤法を
採用しても問題がないでしょう.最尤法では,種々の統計指標が計算しやすく
実際,SASやSPSSでもカイ2乗検定など多くの出力が得られます.また,SEMへの
移行もスムーズです.

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 狩野  裕 大阪大学 大学院人間科学研究科
 〒565-0871 吹田市山田丘1−2  Phone/Fax:06-6879-8052
 http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~kano/
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> 堀@香川大学経済学部です。
> 
> 探索的因子分析について興味深い論文がでました。
> 
> Nancy E. Briggs and Robert C. MacCallum(2003). Recovery of 
> Weak Common Factors by Maximum Likelihood and Ordinary Least 
> Squares Estimation. Multivariate Behavioral Research, 38 
> (1), 25-56.
> 
> です。
> 
> 弱い因子(相関が低い項目の因子)があると最尤法ではうまくそれ
> を回復するできないことがあるが,最小2乗法だと最尤法よりうま
> くいくことが多いというものです。そういう意味で探索的因子分析
> の場合,最小2乗法の分析が必須というものです。各種指標なので
> の最尤法の優位性は認めるものの,因子をうまく抽出するという意
> 味では最小2乗法がいい。
> 
> また,サンプルが300以下の場合も一般に最小2乗法がいい。サ
> ンプルが多いときは最尤法もいいとのこと。研究は 100,300, 500 
> のサンプル。
> 
> この問題,以前に服部さんが日心のfprのワークショップ( 心理学
> 研究における因子分析適用の諸問題 1996.9)
> http://www.nuis.ac.jp/~mat/fpr/workshop96.html
> 
> においてols を推奨していましたが,それを強くサポートする研究
> だといえます。
> 
> また,たまたま起こっているという指摘ですが,Comrey and 
> Lee(1992)の性格検査データの一部を使った例も衝撃的です。4因
> 子のうち1つの因子を弱い因子にしたところ,最尤法では別の因子
> (単数)の因子パタンにも影響を与えています。最小2乗法では影
> 響をうけません。
> 
> 前からいっている因子分析練習帳は最尤法だけでいこうと思ってい
> たのですが,構想を練り直さないといけない。
> 
> ML派の狩野さんから何かコメントが欲しいですね。あの研究会あた
> りでいかがでしょうか。
> 
> それから宣伝。SPSSのcategories を持っている方に。homals, 
> correspondence, catpca を使った授業のためページを作りまし
> た。少し遊んでみようというかたはどうぞ。データを使って処理し
> てみようというレベルです。
> 
> http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/mva.html
> 
> ----
> 堀 啓造(香川大学経済学部)
> home page http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/
> 


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