[fpr 2482] SEMによる項目反応理論について

Masafumi Kirino

岡山県立大学大学院生の桐野と申します。

現在、SEMを用いて項目反応理論における項目母数(識別力、困難度)を推定してお
ります。
構築したモデルは10項目で構成される1因子モデル(カテゴリカル因子分析モデル)
です。
(以下、簡略にするため2項目のみしか扱いません)

[fpr2400]と重複する部分があるかと思いますが、
閾値、項目母数、項目反応モデルの関係について疑問を持ちました。


まず、項目がすべて2値データの場合について考えてみました。

一般に、1母数正規累積モデルでは、
項目の識別力は一定で(ICCが交差しない)、困難度のみが異なることがわかりま
す。
そのため、項目間の難易度には階層的な関係を認めることができると思います。

2母数正規累積モデルでは、
困難度に加えて、項目の識別力も異なることから(ICCが交差する可能性がある)、
困難度のみを比較しても、必ずしも階層関係を認めることができないのでは?
と思います。

次に、SEMで推定された閾値と因子パタンから困難度を推定してみました。
(1母数と2母数の場合の両方について推定しました)
もちろん、解釈は上記と同じだと思われます。


続いて、2値データではなく、多値データを考えてみました。
いわゆる段階反応モデルのことを指しております。

段階反応モデル(2母数正規累積モデル)では、
識別力と困難度(カテゴリ数−1)だけ推定されます。
ここで、たとえば4値(0,1,2,3)のデータであれば、
最上位(3)と最下位(0)のカテゴリについては、そのまま困難度を位置母数とされ
るようですが、
それ以外のカテゴリ(2,3)については、
そのカテゴリが最も観察される確率が高くなるときの尺度値が利用されるようです。

そこで、4値で構成される項目が2つあると仮定し、
それぞれの位置母数を算出しました。

「X1」  -0.154、-0.022、0.298、0.486
「X2」  -0.123、0.240、0.686、0.840
(左端がカテゴリ0、右端がカテゴリ3)

このとき、それぞれのカテゴリの位置母数(「0,3」と「1,2」)は意味が
異なるため、単純に数値の大小で判断できないように思えます。
加えて、識別力も項目間で異なりますので、
同じ回答カテゴリ(たとえば、「0」の回答カテゴリ)どうしの位置母数であっても
単純に比較できないように考えられます。

そこで、制約は強くなりますが、
SEMにおいて、すべての因子パタンを等値制約し(項目間の識別力を等しくして)
閾値を推定し、困難度を算出しました(1母数正規累積モデル)。

「X1」  -0.190、0.070、0.442
「X2」  -0.156、0.469、0.768
(これは閾値の結果です)

このとき、因子パタンが等しいため、困難度を推定しなくても、
閾値そのものが難易度に相当するように思えますが、困難度も推定しております。

このような場合においては、推定された閾値あるいは困難度(カテゴリ数-1)を
項目間や項目内で比較することは可能でしょうか?
具体的には、推定された閾値や困難度を、
回答カテゴリ数だけの位置母数として変換しなければ、
(4値であれば3つの閾値、困難度といったようにすれば・・・)
1母数正規累積モデルにおいてそれらを比較することはできるのでしょうか?
それとも、もしできないのであれば、
この他に対処する方法はあるのでしょうか?

説明不足かもしれませんが、
(用語の誤用等がありましたら申し訳ありません)
些細なことでもかまいませんので、助言をいただければと思います。
よろしくお願いいたします。



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